飛龍伝 2016 公演情報 大坪企画「飛龍伝 2016」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    熱き想い
    「飛龍伝」で描かれる内容は、現在も続く出来事(状況)を描きつつ、時代や人に向き合い一生懸命に生きる若者の青春群像劇でもある。さて、 つかこうへい というペンネームはその当時の運動家の名前から付けたということは、著書にも書かれていることから有名な話。そして、自身が在日韓国人であることから、い”つかこうへい”に ということも意識しているとも...その思いは、現在の(特に政治)日韓関係を見たらどう思うだろう。
    本公演「飛龍伝2016」は、つか作品の特徴をしっかり踏まえている。基本的に暗転がないこと、大道具は使用しない素舞台であること。しかし、暗転について、本公演では重要シーンとして区切るため使用している。
    さて、演出・春田純一氏が少しだけ登場するが、その演技が印象的である。先月行われた映画の舞台挨拶で、共演した女優の言葉を思い出した。
    (上演2時間20分、休憩なし)

    ネタバレBOX

    「別れた女房の恋人」(2016年1月28日初日 渋谷ユーロスペース)で、主演女優・丸純子、監督・金田敬と共に春田氏が舞台挨拶を行った。その際、丸サンから「いつ演技モードになるのか、そのスイッチのようなものが分からないほど、日常会話からスッーと演技に入る」と話しており、監督も同感のようであった。本公演でも冒頭、さり気なく登場し、短いシーンであるがその存在感で場を支配し本編に入る。このプロローグとエピローグに登場するが、その際、この物語の後日談を回想し邂逅させ、その時代の違いを表すために暗転を行う。

    舞台となった1970年安保闘争から45年、当時と状況が違えど、2015年再び安保法をめぐり国会議事堂前が騒然となった。
    70年当時の状況として、保守(国家権力)としての警察機動隊、革新の象徴としての学生運動家という分かりやすい対立構図の中に、中学・高校卒業で安給料の機動隊員と大学在学で、給料より多い仕送りで学生運動を行っているという、保革逆転状況のアイロニー。学歴・経済という重要な要素をいとも簡単に状況の中にはめ込む。
    1970年前後...まず主人公の神林美智子(稲村梓サン)は68年に四国から上京し、東京大学・理科Ⅲ類に入学する。その年はGNPが自由主義国圏で世界第2位になり、国民の9割が「中」の生活レベルを自任する「一億総中流」社会が到来する。その後、舞台となった全学連・安保闘争、73年に第1次石油危機で高度成長は終わりを告げる、という激動の時期という うねりを感じる公演。

    もう一つの見所として、歪な恋愛感情...神林は全学連委員長として敵・第四機動隊・隊長と擬似恋愛におち、スパイ行為をする。そのうち本気になり子供も産む。恋愛という、極めて個人的な感情面に、全学連組織...集団内での立場が人を作るというが、それに縛られるという集団(全体)至上主義の怖さを絡める巧みさ。もちろん擬似から本気の恋愛へ、しかしその結末は悲しい。
    重く、苦しく、そして悲しい内容であるが、その演出はポップ調でもあり、骨太い中にも贅肉のような緩み(笑い)も...見事な観せ方である。

    その物語を紡いでいく役者陣は、それぞれのキャラをしっかり確立しバランス良く観せる。その熱演が脚本をさらに大きく魅力あるものにして観応えがあった。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2016/02/05 07:14

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  • 大坪さま

    コメントありがとうございます。
    そして返信が遅くなりすみません。

    芝居、大変面白かったです。素舞台でのキャストの熱演の結果だと思います。
    もちろん、、稲村梓さんの演技は素晴らしかったです。この公演の前に、「ストリッパー薫子」での演技も拝見しておりますが、その時はまた違って激動の状況を懸命に生きた、という姿がひしひしと伝わってきました。

    次回公演も楽しみにしております。

    2016/02/20 18:18

    大坪です。
    ご来場まことにありがとうございました。
    僕なんかは全てを腑に落とすような機械的な作業は全くダメなので、諦めているのですが、器用さも持ち合わせる稲村は、今回の役は相当精神的な負担は大きかったと思います。稽古の前半からかなり、同一人物になる努力を続けていたように思います。
    つかさんの脚本は、エッジがきいているし、整合性に重きを置いてませんし、台詞長いし、本当に難易度が高いです。我慢強く粘り強く戦った、稲村梓を個人的にも褒めてあげたいです。

    2016/02/18 20:03

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