台風の夜に川を見に行く 公演情報 マニンゲンプロジェクト「台風の夜に川を見に行く」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    映画のような演出
    映画のカットバック、フラッシュバックのような演出...その年代を映し出し、過去や現在など年代に関係なくランダムに描きだす。シーンの切り出しで、時間の連続性が不規則になり時系列でないことが物語の展開を難しく観せるようだ。しかし、だからこそ一定の時間内に描きたい内容を凝縮し、緊張感と臨場感溢れるシーンが生まれる。物語を時間軸(過去から現在)を一定方向で理解しようとすると混乱が生じるかもしれないが、少なくとも自分はその描かれた人物の人生(半生)とそれに関わった人々の日常起こるかもしれない出来事(事件)をダイナミックに捉えた舞台として楽しめた。全員が、それぞれの人生においては主人公であるような…。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    登場人物にして、主人公(佐竹麻希サン)は、横浜マリーまたはメリーをモチーフにしているのだろう。その彼女のドキュメント映画が約10年ほど前に某映画祭の一環で上演されたことがある。その独特の風貌(メイク・衣装など)は、その時代に道化として現れるタイガーマスクやピエロメイク、現代的に言えばコスプレも入るかもしれないが、その自己主張(表現)の一種であろう。そこには他者から認めてもらう、というような面と”生きている”をアピールしているような気がする。
    演技は、各キャラクターを確立しバランスも良い。その陰陽ある生活状況等を表現する照明と音楽は印象深い。特に横浜マリーが壁際で佇む姿に照射し、壁に映し出された陰影が悲しい。

    彼女のエポックとなるような出来事を年代映写し、その時代の特徴(状況)を後景にしつつ、スナックという場を設け、客(1962年生まれの高校の同級生という設定)、店の人たちを従えて、というよりは登場人物全員がカットバックしたシーンに応じて主人公になるという群像劇。

    その舞台セットは、スナックの客席(2つのボックス席、テーブル上には飲食物)、上手にポスター・雑誌表紙、下手にオロナミンC(大村昆)が貼られている。細かい工夫であるが、恵み(施し?)を請う時に出される新千円札(1950年)、オロナミンC(1965年)、復刊した新ロゴ LIFE(1978年)など、登場人物のエポック時期を象徴するもの。

    横浜マリーの半生を中心に、その人生は戦中・戦後という時代に翻弄されたが、必死に生きて来た。そして出入りしていたスナックで出会う人々の人生を衛星のように上手く切り出し、男女間の嫉妬・すれ違い、家庭内で堆積する不満・鬱憤、親子の諦めと断絶、大都市で成功したい・自立したい、そのような関係・願望が、斜に構えつつも温かく見つめるような公演。その描いた姿は、多少コミカルに、シーンによってはシュールに使い分け、その根底には逞しく生きるが見える。登場する人々を通して街路を行き交う、平凡にして日常を淡々と生きる。
    この一瞬乾いたようなシチュエーションであるが、一方応援歌のような...その潤いも感じられる。その大きな流れ(台風)の中で身を委ねて面白さに浸(溺)れた。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2016/01/16 16:53

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