水面に浮く花 公演情報 teamキーチェーン「水面に浮く花」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    優しい...
    全体を優しく慈愛に満ちた目で見ているような、そんな温かさを感じる公演である。当日パンフでも脚本・演出のAzuki女史が「日本の文化や日本人らしい気遣いや優しさ、絆が生む力。私はそれを感じる度に、この国に産まれて良かった。」と記している。この芝居を生んだのは間違いなく女史(他にスタッフ・キャストなど関係者の協力はもちろん)であろう。
    今の世の中、自分のことしか考えない、家族の絆に疑問が、いやそれ以上に確執がという声も聞こえそうだ。女史の言葉に呼応するのであれば、この芝居は古き良き時代を ほうふつ とさせるような懐かしい日本の原風景を見るようだ。

    ネタバレBOX

    舞台セットは、中央が畳部屋に丸卓袱台・箪笥、上手が玄関、格子戸の先に外の板塀が見える。下手は台所というイメージの通路。客席側は庭・縁台。その庭には小さな池がある。

    梗概は、平均的な暮らしをしている5人家族(両親・兄弟・妹)、そこに見知らぬ男が訪ねてくる。実は二男は実子ではない。両親だけが知っており、本人も含め子供たちには話していない。同じ病院で出産した他の子(実母は事情により育てられない)。一方自分の子は死産したこともあり、引き取った。この男は、実母の再婚相手で、二男を引き取り新しい家庭を築きたいという。

    さて、この家の母親が若年性認知症に...家族のことを忘れない、そして自分のことも忘れてほしくないと願う。先10年分の”忘れな草”の苗を届けてもらうよう手配済み。その花びらを子供の名前を呼びながら池に浮かべる、実に印象的なシーンである。チラシのデザインはこのイメージであろう。

    人に対する慈しみに貫かれた世界観。実際の人間社会は醜く汚いものもある。それでも人に対する信頼を持ち続けることの先に希望が見える。
    しかし、人間の醜さに目を瞑ってばかりもいられない。人は悪いことをするという前提に立ち、それを予防するために法律もある。悲観的な見方だけでは未来は見えない。人間は良い面、悪い面の両面から捉える必要があるのではないか。この世には絶対的な悪人、善人はいないのではないか。

    そう考えた時、二男の思考、行動があまりに もの分りが良すぎる。悩みが深ければそれだけ芝居的にも奥行きができたと思う。
    もう一つ気になることは、二男の件と母の認知症の話の関連性が見えないこと。なぜか違う話が別々にあり、違ったまま平行して展開したような感じである。
    二男の件は家族の絆として捉え、(若年性)認知症はまさに医療の大問題であり、身近なところに大きな問題提起をする、その卓越したテーマ設定は素晴らしい。それだけにそのテーマがもう少し深いところで絡み合えば良かったと思う。

    最後に、当日パンフに役名があると助かる。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2015/12/21 19:49

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