満足度★★★★
完成度の高い安定した舞台にちょっと不満も・・・
14日午後、劇団桟敷童子の炭鉱三部作一挙上演最終演目である『泳ぐ機関車』を観に行った。
粗筋は下記の通り。
三好辰介は身重の妻と千鶴・美代の子供姉妹を連れ、寂れた炭鉱町にやってきた。その炭鉱を、自分の手で大きく発展させる夢を持って。自己資金と妻の母親から借りた資金を元手に、その炭鉱町を発展させ町の神様とまで呼ばれるようになった。しかし、私生活では妻は男の子(ハジメ)を産んですぐに亡くなり、男手一つで(実際は住み込みの女中・島森鈴子と関係を持つ)厳しく育てていた。炭鉱の従業員と身分関係なく親しく交わって順調に日々を送っていた辰介だったが、落盤事故で17人の犠牲者を出したことで生活や周りからの一家への態度は一変。家財も失い、辰介も失踪(実際は自殺した)し、子どもたち3人は遠い炭鉱町に住む親戚の元に預けられることになる。
末子ハジメは、落盤事故の原因でもある炭鉱の地下に流れる地下水に蒸気機関車を泳がせ、その蒸気で地下水を暖かくし、人々の心も暖かく和ませたいという夢を描いたのだが、結局その町を離れることで夢は夢で終わってしまうことになる。せっかく結ばれた孤児との交流も断ち切れれて・・・・。
実は、炭鉱三部作の『泥花』は預けられた後の三兄弟の物語、『オバケの太陽』は成人してからのハジメの物語で、今回の炭鉱三部作上演は時系列を遡る形での上演となっている。作品の完成度からも、話の展開や配役という点から観ても、時系列での上演よりも今回の方式によったほうが確実に楽しめるし感動させられたのは確か。
作品の完成度から言えば、今回の『泳ぐ機関車』が秀逸であることは確かなのだが、三作品を連続して観てみると、残念なことに徐々に作品展開のパターンや演出の方法を予測できるようになってしまった。そんなこんなで、完成度が高く期待度も同じく高かった今回の『泳ぐ機関車』で受けた感動は、前回上演の荒削り感のある『泥花』よりも低くなってしまった。と入っても、前2作の盛大な紙吹雪に代わる水の使用や、終演近くの舞台一面のひまわり、それに3作品恒例になった蒸気機関車の登場場面は演出面で圧巻であった。
役者の演技面でも、客席の笑いを誘うセリフや仕草は生きていた。反面、涙を誘われる場面の感動の度合いがちょっよ浅くなってしまったのは、そうした場面の演技面でのあっさり感が根本にあるかもしれない。
役者個人で観ると、三好辰介役の池下重大、ハジメ役の大手忍、野毛綾華(辰介の妻の母親)役の板垣桃子がなかなかの演技を魅せてくれた。客演陣も安定していて、作品として流石に各種賞を受賞しただけのことはある。
今回一連の炭鉱三部作を観て、一番感動したのは宣告書いたように『泥花』、次いで今回の『泳ぐ機関車』という印象を持った。自家には来年の夏に新作上演。期待したい。