クリスマス解放戦線 公演情報 渡辺源四郎商店「クリスマス解放戦線」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    青森のサンタ
    笑っているうちに、何だか現政権下で起こりそうなエピソードにうすら寒くなる作品。
    二転三転して最後にドカンとまたひっくり返す展開が、サスペンスフルで秀逸。
    工藤良平さん、三上晴香さん、音喜多咲子さん、工藤由佳子さん、役者陣がほんと完璧。
    何がって、台詞の咀嚼度、キャラの作りこみ、台詞の間、声のトーン等々が。
    70分くらいという長さも実に心地よい。

    ネタバレBOX

    舞台中央階段の上にはクリスマスリースの飾られた白いドア。
    ここは「クリスマス解放戦線」の拠点で、訪問者は合言葉を言わなければ入れない。
    リーダーのシンちゃん(工藤良平)は先代リーダーのコズエ(夏井澪菜)を慕い、
    過激な活動の後今は行方不明になっている彼女を、10年間学生のまま待っている。
    近未来の日本では、「クリスマスは日本国民を堕落させる」として
    祝うことを禁じられている。
    「クリ戦」は、密かにその禁じられたクリスマスを祝う集団だ。
    今年もささやかなイベントを計画し、ツリーやケーキを用意している。
    ところが新メンバーとして参加した者の中に、警察側の人間やカルト教団の教祖が
    紛れ込んでいてメンバーたちは大混乱に陥る。
    実はその時、誰も知らない秘密の計画が進んでいた…。

    少し前“クリスマスにはホテル・ディナー・ブランド物のプレゼント”という
    バブル3点セットみたいなものがもてはやされた時代があった。
    日本人の価値観が狂い堕落したのはあの“クリスマスなるイベント”のせいだ、
    だから取り締まれ、という乱暴な論理が現政権と重なって面白い。

    クリ戦メンバーキララ(音喜多咲子)の“毒吐きキャラ”も健在で楽しい。
    彼女が実は大学1年ではなく、中学1年だったというのも見た目リアルに可笑しい。
    音喜多咲子さんは台詞の“当意即妙感”が素晴らしく、これは天性のものだと思う。

    もう1人紛れ込んでいたカルト教団「クリスマス帝国」のレイコ(三上晴佳)の
    教祖ぶりも強烈な印象を残す。
    自在な声の使い方、“イッちゃってる”風な目つきと妙な押しの強さ、で存在感抜群。
    手下のサンタ(畑澤聖悟)に武器を配らせ、クリ戦メンバーを殺人テロ活動へと導く
    ダークな教祖の凄みが素晴らしい。

    実はすべてが国のカルト教団を潰すための計画だったとは、
    そしてシンちゃんが法務大臣と取引していたとは…。
    ラスト、帰って来たコズエのお腹が大きくなっていることに打ちのめされながらも
    10年分のクリスマスプレゼントを次々渡すシンちゃんの姿にほろ苦い思いがこみ上げる。

    日常と非日常、現実と悲現実を、薄い膜1枚で隣り合わせに描くことにかけては
    なべげんは最高峰だと思っている。
    毎回“演劇が今の日本の危うさを炙り出す最高に効果的な手法である”
    ことを思い知らされる。
    その意味で、「翔べ!原子力ロボむつ」や「海峡の7姉妹」、
    「エレクトリックおばあちゃん」等の震えるような、こみ上げるような、
    突き上げる感動は今回鳴りをひそめた感じ。
    今回は対象が、直面する困難さではなく“時代の価値観”みたいなもの
    だったからだろうか。

    でも娘を連れ戻しに来た母親(工藤由佳子)が
    「恋人はサンタクロース?!背の高いサンタクロースだぁ?!」と毒づくところ、
    どうせすぐ別れるのに大枚はたいて盛り上がる人々に感心していた私としては
    心から賛同いたしました(笑)







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    2015/11/25 02:18

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