満足度★★★
シンプル・サスペンデッズ
過去観劇4本程度。今回は劇団男優3人による(なぜか)「好色五人女」というので一体どういう趣向かと楽しみに出かけた。 不幸な事に(このところ恒に疲労しているため)前半にしばしば睡魔に見舞われ、目を無理やり開けても言葉が脳の解析機能を通過せず、原作を知らない自分には筋を追う上できつい事態となった。<おせん>が関わる複数の男、特に目立つ二人のどちらがどういう関係の者なのかが、不明のまま最後を迎えてしまった。もっとも、終盤の展開の「意味合い」そのものは見え、最後に付加された翻案は構図的に明瞭で「読み違え」ようはない。
こうした作品のお土産=原作への興味は持ち帰った。小さなシアター711で3名という布陣は程よく、セットは黒の床・壁、中央に垂れた黒幕、四角い箱を組み合わせて場面を転換し、「時代物」と判るユニフォーム的衣裳で複数の役を演じ、走り回る。テンションの高い舞台だった。
ただ、もっと高い完成度を狙えたのではないか、と感じる余地がそこはかとなくあった。原作を知らず途中筋を見失った者ではあるが、この感じは「筋・物語」という情報面に関するものでなく、美的側面に関わるもの。
<おせん>役を担った佐藤銀平氏が「女性」性をガン無視して演じているように見えた事。演じ「られなかった」のか、意図的なのか、不明だが、狙いだったとすればこれは外れではないか(体形的にも他の俳優が適していなかったか)。また俳優のテンション、要は声のボリュームが、不要に高い。演劇としての「高み」を、最後の手段=テンションに求むしかなかったのか・・ 「女性」性の乏しさと相まって、これは繊細な作りを断念し、ノリで突っ切らせたように見え、どうも江戸の人情機微から離れて行く感を否めなかった。
「筋を見失った」ゆえに抱いた不満である可能性は、否定できないが・・。