米沢、本島の踊りと演技を堪能
11/1の午後、新国立劇場バレエ団公演『ホフマン物語』を観てきた。バレエファンは、自分の好みの踊り手が出演する日のチケットを購入して鑑賞するのであろうが、自分の場合は仕事との兼ね合いで自分の休日スケジュールに合った日の公演を見に行くことになるので、誰がその日の踊りて手なのか、そしてそれが自分のお気に入りの踊り手なのかは行く日を決めて確認することになる。
さて、11/1マチネーの主な配役は下記の通り。
ホフマン 菅野英男
オリンピア 奥田花純
アントニア 米沢唯
ジュリエッタ 本島美和
リンドルフ&スパランザー二 貝川鐵夫
ラ・ステラ 堀口純
指揮:ポール・マーフィー
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
個人的に言えば、新国立劇場バレエ団のプリンシパルで一番好きなのは本島美和で、この日はジュリエッタ役で登場ということでまぁまぁ満足。問題は、オリンピアとラ・ステラを踊るのがプリンシパルでもファースト・ソリストでもなくソリストである点。上手く踊ってくれるか少々不安であった。
『ホフマン物語』という作品はもともとはバレエ作品ではなく、オッフェンバックが作曲したオペラをバレエ用にツキ変えたもの。それ故、単に踊りの美しさや優雅さを楽しむだけではなく、踊りや踊っていない時の仕草にセリフに変わる演技を要素要求される。一般に、こういう種はバレエ作品をドラマティックバレエと呼ばれてる。
ダンサーにとって、踊りだけでなく高度な演技も要求されるので役をこなすのがかなり難しいらしく、公演全般でダンサーの転倒がかなりあったことがネット上でかなりの数報告されていたが、幸いにも自分が観に行った日は転倒は皆無であり、音楽も含め総じてかなり完成度の高い充実した舞台であった。
作品の粗筋は、詩人ホフマンが現在の恋人ラ・ステラを待っている間にカフェで酔っぱらい、周囲の人々にけしかけられて過去の失恋を3話するというもの。最後には現在のラ・ステラにも振られるので、実際は4話ということになろうか。一人目の相手は、魔法のメガネをかけると生きた人間に見える人形のオリンピア。浮かれすぎてメガネを外してしまい、オリンピアは人形に戻ってバラバラになってしまう。二人目は病弱で踊りを禁じられていたアントニア。悪徳医師の催眠術にかかり、病気が治ったものと思い込みホフマンの弾くピアノに踊り狂った挙句命を落とす。三人目は悪魔が仕切る快楽の世界に生きるジュリエッタ。その魅力に惹かれたものの、鏡に自分の姿が映らない事に気付き、悪魔の世界から信仰の世界に戻り彼女と決別する。そして、酔いつぶれてし合った彼はラ・ステラとのデートの約束を破り彼女を別人にとられてしまう。
顔立ちがハッキリしていて妖艶さを持ち合わせた本島のジュリエッタはまさに適役。男性ダンサーとのコンビネーションが乱れてヒヤリとした瞬間はあったものの、無難にカヴァーしてプリンシパルの実力をしっかりと魅せつけた。それ以上に良かったのは、予想外と言ったらファンの方々から叱られそうだがアントニオを踊った米沢唯。演技も素晴らしく、この日一番の出来のダンサーだった。こういう役柄は、ダブルキャストの小野絢子より適役だろうと思った。
もう一人、踊りはしなかったが演技と存在感が大きかったのが、ラ・ステラのお付き役を演じたフルフォード佳林。ダンス次第では、彼女も大役に抜擢される日も遠くはないだろう。
ダンスと演技としては第一幕の人形を作ったスパランザー二とその召使二人が秀逸。第三幕で助演者として鏡の番人が二人出ていたはずなのだが、誰がそれに該当するのかはっきりしなかったのがちょっと不満。衣装や大道具も最近の公演としては力が入っていた。将来的に、レパートリーに加え再演されることを望む。