オバケの太陽 公演情報 劇団桟敷童子「オバケの太陽」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    黒い涙が…
    場内は、一面ひまわり畑で、それは実に美しい。同じように戦後復興期における労働者、特に炭坑労働者の資本(会社)に対するいくつかの檄文も掲げられている。
    その炭坑街をイメージする風景...一瞬の舞台転換で栄枯盛衰を表現する演出の巧みさ。
    その後、廃炭坑街で暮らす人々のあり様と人情味は心に沁みる。そしてラストシーンは滂沱する。

    ネタバレBOX

    戦後の復興期に鉱工業生産が間に合わず、鉄道敷設等が出来なかった。その後、政府の石炭優先の傾斜生産、炭坑治安が功を奏し経済再建に貢献した。
    しかし、1970年代オイルショックを契機にエネルギー政策も影響し、炭坑衰退の一途を辿り、1997年の三井三池炭鉱閉山をもって炭坑の灯が消えた。本公演は衰退後の炭坑街を背景にした人情劇であり、鉱産業ノンフィクションのような公演でもあった。その底流にある人間讃歌は観る者の魂に響く。

    冒頭はとにかく”熱い!”石炭という黒いダイヤを採掘する人々のエネルギーが場面ごとに観てとれる。国策、企業発展のために酷使された人々、その労働者たちの労働歌「がんばろう」から始まる。仕事へのなりふり構わない情熱、それに伴う街の賑わい。暗い地底で危険との隣り合わせの中から仕事や世相を歌った炭坑節。その音楽選定なども見事であった。

    一転、炭鉱閉山...炭坑での事故(爆発、CO中毒等)によって家族離散・孤児になった人々も多くいるという。経済成長の陰で泣いた人。公演ではそんな人(子)に焦点を当て温かい眼差しで見守る。
    ラストは、石炭を燃料として走る機関車(OBAKE62号)が疾走する。それは遥か昔のことのようだ。”オバケの太陽”というタイトル、その意味する慈愛にあふれ前向きな言葉(その太陽は沈まない、その太陽は夢を見る)が印象的である。機関車の前部に座っているのが、今はいない2人の姉と当時の僕...松尾元(池下重大サン)。

    さて、梁瀬範一(大手忍サン)が、帽子を目深に被り、涙を見せず両肘張って歩く姿...その虚勢のようにも見えるが、まっすぐ前(客席)に向かって歩く姿、そこに(紙)吹雪が、それは向日葵の花弁が舞っているようでもある。本当に余韻があり感動した。

    次回(第二部、第三部)の公演も楽しみにしております。

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    2015/10/25 21:26

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