夜への長い旅路 公演情報 梅田芸術劇場「夜への長い旅路」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    孤独を描く
    丁寧かつ真情豊かな演技に圧倒された二時間。
    麻実れいの役者力を見直した。益岡徹の闊達さも。兄弟役の二人も有名どころらしいが、良い演技をしていた。
    ユージーン・オニール作、に惹かれてチケット購入、しようとしたところ発売後間もない時期にも関わらず完売。トラムシートの追加販売を購入した。
    時代性の違いは、麻薬中毒への適切な対処をできていない所や、結核が不治の病である所。が、そこはあまり気にならず、時代は幾分遡ることを認識しながら、「今」起こっている光景として、時代を忘れて観ることができた舞台だった。
    熊林演出は「tribes」以来の観劇だが、静かさの中の力強さを今回の舞台にも見た。奥行のある舞台の正面(奥の方)に、部屋から出る扉の枠が立っている。その扉の向こうに立ち、ゆっくりと戸が閉まる、あるいは、立ちすくんだまま、照明が落ちる。そこに立つ者は孤独の時間へ戻って行く囚われ人のように見え、幾度となくそこに立つ(二階へ行くために)のが、麻実演じる母だ。が、最後にそれまで立たなかった者が立つ。そこで反転が起きるのが戯曲の示唆なのか、演出なのか分からないが、その者は拒絶してきた真実をその時ようやく受け入れた、という風に見える。孤独と、そこにしかない癒しの中に、劇は終わる。
    小さな破綻も甘さもない鋼のような戯曲である。

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    2015/10/23 02:52

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