底ん処をよろしく 公演情報 東京ストーリーテラー「底ん処をよろしく」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    創業70年の優しき食堂【Aチーム】
    この公演...普通の人の人生にこそドラマがある。そして市井に暮らす人々の物語として見事に結実していた。平凡であっても抱えた苦悩・悔悟があり、その逆境に向き合い克服しようとしているひたむきな姿に感動する。
    舞台は戦後間もなく開店した「底ん処」...創業70年という老舗、いや古いだけの大衆食堂である。戦後の食うことに困る、それこそどん底の人たちに食事を...。この食堂に集う人々と店の主人、娘(独身)の交流を描いた泣き笑いの人情劇である。

    ネタバレBOX

    その描き方は「庶民の腹の味方...安くて旨い食事」といったところ。その精神は先代が書き残した「底ん処 生業の心得」という冊子にある。戦後からの復興、高度成長期を支えた勤労者への讃歌も聞こえるようだ。それは当今のエリート層や損得勘定だけで生きている人々への静かな抵抗のようでもある。「好きな道を生きる」「他人のために生きる」「あきらめずに生きる」人々であり、挫折や悔恨をバネに生きる、どこにでも居そうな日本人である。

    舞台は、食堂内、テーブル席4つ、上手には自宅への出入口、中央奥にはレジ台、厨房への入口、下手には店玄関(暖簾)が丁寧に作られている。献立は和食中心に「つくねハンバーグ定食」「豚生姜焼き定食」など550~650円である(劇中で配布されるチラシより抜粋)。
    シャッター商店街と揶揄されるような場所にある店。客は常連ばかりで売上げが伸びず生活はギリギリ。店主の父親は跡継ぎもいないことから廃業を考えている。そんなところに元弁護士が...訳ありなのは一目瞭然である。この謎めいた人物の目的とは...。
    そして廃業を考えている店主が語る”店の歴史”が心魂に響く。70年を刻んだ店「底ん処(をよろしく)」物語の自主出版、そして店の将来はどうなるのか。謎の女性も登場するが、こちらも気になる~。

    戦後70年間で日本人が得たものと、失ったものを思い起こさせる。得たものは間違いなく経済的な繁栄であり、生活の利便性であろう。失ったものは、人生には貧乏や不便から抜け出すこと以上に大切なこと、何かを知る、聞く、助けることで輝くことができるという感覚(人情に近い?)ではないか。
    ちなみにラストはハッピーエンドである。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2015/10/20 01:08

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