ハイバイ オムニ出す(チケット売り切れましたが特別追加公演やります。) 公演情報 ハイバイ「ハイバイ オムニ出す(チケット売り切れましたが特別追加公演やります。)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ねじれ、よじれる、可能性。
    ハイバイの新作は、4つのジャンルのオムニバス。初日は、4つの中から、「SF」と「落語」。これが、とっても面白かった。

    ネタバレBOX

    オムニバス上演、最近、やたらと目にする形。それらの多くは、「手軽さ」をウリ、目的としているみたい。今回のハイバイの『オム二出す』も、お手軽で、とても初心者に優しいものになっている。でも、もちろん、それだけじゃない。僕は、オムニバス形式って、ハイバイのエッセンスそのものという気がする。

    オムニバスという上演形式が、これほどしっくりくる劇団もないのじゃないか。ハイバイの作品は、いつも、一つの作品でも、なんだか、いくつもの作品を同時に観たような気になるのだ。

    さて、初日に観た2作品だけれど、やっぱり、ハイバイらしいのは、「落語/男の旅—なつこ編」だと思う。

    物語そのものは、とっても単純。三人の若者が、フーゾクへ。三者三様のフーゾク模様。役者さんは、一人で、その場の何人かを、落語よろしく、同時に演じる。時には、二人で四人を演じたり、三人で四人を演じたり、変則的なことも。

    ホンモノの落語と違って、演じるので、一人をちょっと演じて、無言で場所を移って、もう一人を演じる。これで、例えば、ひとりでセックスしてる二人を、やったりする。爆笑をさそいながら、同時に、物語に、微妙なズレが生じる。つまり、役者さんが、役を入れかわるタイムラグが、物語そのもののズレと、まったりと重なっていて、最後は、一瞬、物語が、完全に二つに分岐してしまう。

    これは、ちょっと、わかりにくい。観ていて、爆笑しながらも、気を抜くと、すぐに置いていかれそうになってしまう。そしてそれこそが、ハイバイの魅力のひとつだと、僕は思う。

    ハイバイの作品は、けっこう、構造が複雑で入り組んでいる。それは、表面上の物語が単純にみえるだけに、いっそう不気味に、ぼんやりと、浮かび上がる。まっすぐには進まない。たとえば、小刻みな反復をくり返す。それは、同じことをくり返しているはずなのに、微妙なズレを生み出したりする。

    そうするうちに、ひとつの物語……というより、「話」が、観ている僕の頭のなかで、どんどん勝手に分岐して、なんだか、無数の可能性そのものみたいにみえてくる。道は、ねじれよじれて、迷路みたい。ひとつの入り口が、たくさんの出口につながっている。

    それは、なにやら、人、そのものに、触れている気がする。僕のカラダの底にある、敏感な所に、ぴとっとふれる。

    僕にとって、それは、あまり気持ちのいいものではない。やめてよ、というほうが、どちらかというと強い。でも、それなのに、ハイバイの舞台を、とても楽しみに観てしまう。ハイバイは、観客をも、ねじれ、よじれ、させるのかもしれなくて、それは、気持ち悪くて、気持ちよいのかも、そんなふうにしか、いえない気がした。

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    2008/10/20 12:20

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