気がつけば五・七・五 公演情報 試験管ベビー「気がつけば五・七・五」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    DARC
    DARCという名を聞いたことはあるだろうか? Drug Addiction Rehabilita-
    tion Centerの略である。

    ネタバレBOX

    要は薬中リハビリセンターである。世間はそう見るだろう。この言い方には差別が含まれる。そのことを言う側は、それだけの迷惑を掛けているのだから当然とするかも知れない。然し乍ら、そういう認識は果たして正しいか? 
    実際、この施設でリハビリに励む人々を描いた今作では、収容される本人が、依存症とは病である、という認識を持っていない。即ち己の病に対し、差別する側と同様、無知なのである。その為、必要なケアではなく、何とかしなければ、自分の我慢が足りないからだ、堪え性が無いからだ、と無益な努力をした結果、その努力の苦しさや社会的疎外感など様々な要因からなる誘因に惹かれて再犯という形になってしまう。非情にデリケートで難しい問題であり、中毒者本人だけではどうにもならないのが現実なのである。
    そこでDARCではグループセラピーを行っている。皆で病に係ることによって、自分の悩みが自分だけのものではないことに、収容者達は気付き、自分自身の位置をそれまでより客観化できるのである。無論、この変化は本質的である。何故なら、この事実に気付くことによって初めて、各収容者は自分が、皆の中でちゃんと生きているという認識を持つからであり、ヒトが社会的存在であるということの根本を知るからである。実存哲学的に言えば、キルケゴールが規定したように不安・絶望・孤独により自己認識が失われた状態からサルトルの言う対他存在への移行というコンセプトで説明できそうである。天才哲学者達が必死に考えて漸く発見したことである。そんなに簡単に分かることではない。だから、施設に入っても個人差はあるが、これが分かる迄に皆長い時間を要する。その間にまた薬物に手を出してしまえば零に戻るどころかマイナスである。だから、施設では「今日だけは、我慢しようね」と日々を1日ずつ乗り越えてゆくことを実践している。これが生涯続くと考えて貰えば、如何に困難な事か分かって頂けよう。その困難に真正面から取り組み、極めて深い認識と理解、そして丁寧で良く練られたシナリオ、演出、演技によって舞台化した実に良心的な作品である。
     

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    2015/08/19 16:27

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