イツモノコト 公演情報 演人の夜「イツモノコト」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★

    このタイトルに象徴されている。
    そう感じさせる内容である。

    ネタバレBOX

    実際に起こった事件をベースに書かれたシナリオだというが、だとしたら事件の読み込みが浅いのではないか? 自分も若い頃、地域の住民運動に関ったり不良少年、少女の取材をしたりした上で記事を書いたり、本を作ったりしていた関係で殺人を犯した少年についてもマスコミ等には決して載らない事情を知っても居る。そういうアンテナにコミットして来ないのだ。また、自分自身、問題児でもあった。だから総てのケースを自分の問題として捉えうる、というようなお目出度い学者論理を捏ねるつもりも毛頭ない。が、矢張りコミットしてこないという印象が強い。真面目に取り組もうという“つもり”は信じたいだけに残念である。
     今作で頗る重要な意味を持つ主人公東雲役の黒い絵についても認識が浅すぎる。真っ黒な絵は、アド・ラインハルトの中心的なテーマの一つであり、世界の抽象絵画画壇に賛否両論の一大旋風を巻き起こしてもいる。
     まあ、知らないことは仕方が無い。然し、不良と呼ばれる程の子の感受性は、凡俗の想像の及ぶ所ではない。遥かに尖鋭的であり、痛みに満ちた鋭さを持つものである。その辺りの事情に疎いことが全編を通して伝わってくる。
    またこの作家は、犯罪者或いは予備軍として、予めレッテル貼りをした上で登場人物達を創造しているように思う。親を殺すという行為は、無論、犯罪としては重大犯である。然し、殺されなければならないような親が存在することもまた事実なのである。自分が、実際見て来た問題では、子に問題が在る場合、その親にも同様の問題があり、更に祖父母にも問題があった。その確率は非情に高い。親殺しが実現してしまう為には、何らかのきっかけが必要である。今作で描かれたきっかけは、本当に近いのではないか? とは思うが、ここが光ったくらいだ。大抵は、親殺しという形では顕現しない。にも拘わらず、問題の根は同じなのである。その辺りの深い思索が感じられないし、共感も感じられない。問題に関らなければという空虚な“正義”のようなものが中心を為しているように思われるのだ。そんな表面だけなぞっても救わなければならない人々は決して近寄って来ないだろう。嘘がミエミエだからだ。もう少し、想像力の何たるかを学び直して欲しい。

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    2015/08/15 03:07

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