人が流されていく川 公演情報 The Stone Age ブライアント「人が流されていく川」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    演出、演技論に徹底的に拘ってみれば大化けの可能性あり
    舞台は終始川の土手で展開する。

    ネタバレBOX

    舞台奥が高く手前が低いちょっと変わったレイアウトで川の土手を表し、上手には、途中で寸断された木製の構造物が設えられている。これは、対岸へ向かって延びていた橋の残滓である。対岸は、無論、客席側になるので舞台上で描かれているのは此岸のみだが、対岸には缶詰工場がある。
     物語は、此岸にある施設に係る人々の話である。施設とは、生きていたく無い人を安楽死させる為の施設で福祉課の管轄であり、調剤指示を与える為の医師もいれば、ケアスタッフも居る。要するに体の良い姥捨て山の未来版であり、別にお年寄りのみならず、自殺志願者は総て対象になる。但し、一旦、安楽死を望んで施設に入った後、逃げ出して普通の生活に戻ろうとする者に対する世間の風は、犯罪者に対するより厳しく、住む所も仕事も見付からないというのが実情である。また、施設で働くスタッフ達も出来れば殺人に携わりたくない、と考えているというのが実情だ。
     然し、そんなことにはお構いなく、死を選択する者は後を絶たず、逃げ出す者も後を絶たない。今作が極めて特異な点は、ヒトは他人を見捨てて良いのか? という極めて素朴な問題を根底から観客に突きつけてくる点である。このラディカリズムが、通常の芝居によって演じられている所に、ありきたりな表現を見て仕舞うことも事実である。タデウシュ・カントルのように演じない「芝居」を演出した方が、より世界的な評価は受け易かろう。但し、日本の演劇界では毀誉褒貶甚だしかろうが、それだけの演出をしても耐えるだけの優れた問い掛けを内包したシナリオである。

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    2015/08/13 04:39

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