子どもに見せたい舞台 vol.9「アンデルセン童話集」 公演情報 NPO法人アートネットワーク・ジャパン(ANJ)「子どもに見せたい舞台 vol.9「アンデルセン童話集」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    今年は、(ほぼ)FUKAIPRODUCE羽衣の公演
    脚本・演出・音楽が糸井幸之介さんで、出演者はFUKAIPRODUCE羽衣に客演さんたち、の感じ。
    では、いつものFUKAIPRODUCE羽衣とは何が違うのか?
    それは、切なさはあるけど、リビドーがないこと。

    ネタバレBOX

    としまアート夏まつりの「子どもに見せたい舞台」は、何度か観たことがあるが、その中では今回が一番。

    子ども向けとしながらも、演劇としての完成度が高く、歌や踊りもある音楽劇として観客を楽しませてくれた。
    通常のFUKAIPRODUCE羽衣で取り入れられている手法だが、より「音楽劇」としてわかりやすい構造になっている。

    演劇としての完成度が高いのは、アンデルセンの童話をもとにした戯曲が成功しているからだ。
    例えば、人魚姫の物語を「泡たち」に語らせることで、物語に深みと幅が出たのではないか。
    ラストの付け足しも効いてくる(ま、個人的にはそれは蛇足に感じたのだが・笑)。

    アンデルセンの童話で、取り上げたのは、『はだかの王さま』『人魚姫』『五粒の豆』『みにくいアヒルの子』、そしてアンコールとして『マッチ売りの少女』。

    どれも「オチ」のようなラストの構造にしていないことで、物語は観客の中へ広がっていったのではないだろうか。

    観客は、「子どもに見せたい舞台」にふさわしく、圧倒的に親子連れが多かった。
    しかも、低年齢の子どもが多い印象だ。

    そんな観客層へ、オープニングのつかみは最高だった。
    月を演じた深井順子さんが客席に降りてきて通路を行くのだ。
    まわりにいた子どもたちのテンションが一気に上がったのがわかった。
    舞台の上にいる人が降りて、そばにやって来るというのは、凄いことなんだなと、改めて感じた。

    これがラストまで、うまい使い方で、観客を沸かせていた。
    エンディングも役者さんたちが通路を通って去っていくとのが、いい。
    深井順子さんや、日髙啓介さんは、自分から手を差し出すことができずに、少しためらっている子どもたちにも、積極的に手を触ったり、頭を撫でたりしていた。そうしてもらった子どもは、本当にうれしそうだった。

    子ども向けということからか、『人魚姫』で、泡から空気になった人魚姫ということで終わりではなく、子どもの躾的な話題で、客席に語りかける展開になっていくのだが、これだけは蛇足に思えてしまった(語りかけるところが)。
    「いい子でいようね」とか、子どもは聞き飽きているんじゃないのかな。

    逆に、『はだかの王さま』で、「王様は裸だ!」と観客に叫ばせてもいいかな、とも思ったり。参加するほうがいいと思うので。

    とは言え、低年齢の子どもたちにおもねるわけではなく、大人でも十分に楽しめるレベルの演劇を見せてくれる(機織り職人が、「飲み食いをせず徹夜(鉄矢)で」と言って髪をかき上げる仕草をする、ということではなく・笑)。
    誰もが知っているアンデルセン童話のアレンジがうまいから、メッセージとして伝わってくるものがある。

    そのメッセージ、テーマは、いつものFUKAIPRODUCE羽衣に通じるところがあるのではないか。
    孤独だったり、切なさだったり、前に向かう自由さだったりと。
    ……リビドー、というかエロさだけはないけれど(笑)。

    それがないことで「青春の…」的な感じではないところで、子どもの親世代にもグッとくるところがあったのではないか。
    わからないけど。

    深井順子さんの、テンションの高さが子どもたちの気持ちにマッチしていたと思う。
    高橋義和さんの王様、よかった。澤田慎司さんの王子様もぴったり。鯉和鮎美さんの人魚姫、いい歌を聴かせた。
    井上みなみさんのマッチ売りの少女は、歌も含めて、儚さと切なさが抜群だった。

    歌は、やっぱりいい。
    いつものような、シャウトではないところが、また違った感覚。

    振り付けが井手茂太さんなので、それもいい結果となっていた。

    公演のサントラを販売していた。
    700円。
    もちろん買った。
    通常のFUKAIPRODUCE羽衣の公演でも、その演目のサントラをその日に販売するといいのにと思った。

    以下、公演のときに観たことで、心に残っていること。
    ラストで月が帰るときに、月の帽子を忘れていく(演出で)。子どもたちが一斉に「帽子」「帽子」と叫んでいたこと。そのあとの展開は、みんなが笑っていたこと。
    近くにいた幼稚園ぐらいの女の子が、弟にアンデルセン童話のストーリーを教えてあげていたこと。
    人魚姫が声をなくしてから、気持ちを歌っていたときに、「しゃべってる! しゃべってる」と親に訴えていた子どもがいたこと。


    ついでに。
    この公演は、0歳児からOKとしている。
    しかし、実際0歳児は厳しいだろう。
    この日も、乳児が何人かいたようだ。
    前のほうにいた乳児は、後半、引きつけを起こすのではないか、と思うほどぐずって泣いていた。
    観客も集中できないが、それよりも、赤ちゃん大丈夫か? と気になってしまった。
    さすがにO歳児は、託児サービスの設置をしたほうがいいのでは。

    0

    2015/08/10 06:32

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大