鏡花×劇 草迷宮 公演情報 遊戯空間「鏡花×劇 草迷宮」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    能…
    随分前になるが、「能を観に行こう」と誘われたのに「飲みに行こう」と勘違いし、飲食街とはほど遠い国立能楽堂に連れて行かれた、笑うに笑えない恥ずかしい思い出がある。

    さて今回も失敗した。開場時間前に到着したが、既に多くの方々が並んで待っていた。自分としては、中正面見所で目付柱が邪魔にならない席に座りたかったが、やはりその位置(列)は先客がいた。やむを得ず正面見所で橋掛りからの登場が立体的に観える席へ。正面だと役者の表情や横の動きはよくわかるが、前後の動きや足運びが観難い。

    物語は、明治の文豪・泉鏡花の「草迷宮」であり、その妖(怪)しげな雰囲気は、能における現実と夢、この世とあの世が交錯する「幽玄」な世界観にぴったりであった。その演出は照明の「幽冥」のようなトーンが、まさしく「幽明」を感じさせる。
    さらに、正面・鏡板の老松の絵が、この物語の舞台場所である三浦半島の大崩(おおくずれ)であることから、磯馴れ松のように見えるところが不思議である。

    ネタバレBOX

    能の様式化された舞...本公演「草迷宮」では、始めのコロスの中で堪能した。そして現代能として、夢幻能とは違う、いやその逆のような物語は面白かった。つまり現実と夢の二つが交差し、主人公の亡霊が回想して聞かせる人間の内面劇。今回は諸国行脚の法師が霊との交信をするような、こちらも人間心理の側面である恋慕を描く。

    この梗概は「諸国行脚の小次郎法師は、茶屋の老婆から秋谷(あきや)の旧邸、通称「秋谷邸(やしき)」では昨夏に5人の死者を出し祟りを恐れられ、無人となっていたという。そこで回向に赴く。秋谷邸には、幼いころに聞いた手鞠歌の手がかりを探して小倉からはるばるたどり着いた、葉越明が住み着いていた。葉越は小次郎に、秋谷邸で起こる数々の怪異について語り聞かせた。
    その晩、葉越が眠っている間、小次郎の前に、秋谷悪左衛門と名乗る悪魔と、葉越の幼馴染で神隠しに遭って邸に住んでいた菖蒲(あやめ)が現れた。ある理由で菖蒲は葉越には会えないので、葉越を追い出すために悪左衛門が怪異を起こしていたが、葉越が逃げないので、菖蒲が秋谷邸を出て行くことにしたというのだ。
    菖蒲が手鞠歌を歌うと、葉越は目を覚まし菖蒲にすがろうとするが、菖蒲は去っていった。」というものである。

    茶屋の姥が秋谷の邸で連続して死人が出た、と語る場面は少し冗長に感じた。能のゆったりした語り口は、その動作が伴わないと”演劇”を観ている観客(自分)にとっては集中力を保つのが大変であった。

    しかし全体的には、この世に浮かび出た霊が、法師と対話する。現実と夢の描きは泉鏡花の「高野聖」等の小説に見られる妖艶・亡霊の世界そのもの。
    実に観応えのある現代能であった。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2015/07/27 23:33

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