満足度★★★★
能…
随分前になるが、「能を観に行こう」と誘われたのに「飲みに行こう」と勘違いし、飲食街とはほど遠い国立能楽堂に連れて行かれた、笑うに笑えない恥ずかしい思い出がある。
さて今回も失敗した。開場時間前に到着したが、既に多くの方々が並んで待っていた。自分としては、中正面見所で目付柱が邪魔にならない席に座りたかったが、やはりその位置(列)は先客がいた。やむを得ず正面見所で橋掛りからの登場が立体的に観える席へ。正面だと役者の表情や横の動きはよくわかるが、前後の動きや足運びが観難い。
物語は、明治の文豪・泉鏡花の「草迷宮」であり、その妖(怪)しげな雰囲気は、能における現実と夢、この世とあの世が交錯する「幽玄」な世界観にぴったりであった。その演出は照明の「幽冥」のようなトーンが、まさしく「幽明」を感じさせる。
さらに、正面・鏡板の老松の絵が、この物語の舞台場所である三浦半島の大崩(おおくずれ)であることから、磯馴れ松のように見えるところが不思議である。