フォルケフィエンデ ー人民の敵ー 公演情報 雷ストレンジャーズ「フォルケフィエンデ ー人民の敵ー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    130年前の洞察力・筆力に唖然とする。
    ありそうな話である。温泉を売りにしている村全体の利害が、ある事実の発見と、その事が約束するはずの「公への貢献」という発見者の栄光を、奪い去る。安全でないものを安全と言い募って原発の危険と被爆の実態を覆い隠している日本と、ほとんど違わない構図に恐ろしくなる。裸にされるようだ。主人公の医師が直面する現実を、観客は追体験する。彼の家族、地元の新聞記者と出版社、村長といった人物たちの立場、その変節が、利害に裏付けられていてリアルである。
     医師の辿る道は、ユダヤの律法学者の欺瞞を鋭く指摘したがために磔刑となったキリスト・イエスの足跡に重なり、恐らくは欧州ではドラマ構造の下敷きとして当然に踏まえられていると想像される。主人公の妻が、それまでは反対であった態度を、周囲が寝返ったのを機に夫の味方に転じるという展開にも、そうした背景を思わせる。日本ではそんな事が起こり得るだろうか‥。物語の終盤、住民を集めた集会で医師が「新たに発見した真実」として叩き付けるのは、多数は間違っており、正しいのは少数である。この世界の圧倒多数を占めている愚者に、なぜ少数の正しい者が従わねばならぬのか。‥ほとんど吐きつけるように語る医師。
     観客は彼とともに、自身が少数側である苦痛を追体験する。 さらに劇場を出ると、そこでも「少数者」の孤独が待っている。だがこのドラマは医師に語ることをやめさせず、最後の最後、医師に快哉を叫ばせている。そして暗転。イプセンの筆の力に屈服する瞬間である。

    ネタバレBOX

    この回は、半端なく「噛み」が多かった。それでもなお気持ちを持続し芝居を最後まで持って行ったのには敬服するが、熟練の役者が出演する舞台としては、記録に残りそうな頻度。勿体ない事この上無しであった。

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    2015/07/27 13:44

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