祝祭 公演情報 Trigger Line「祝祭」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    誰かのために生きる
    フィクションとノンフィクションを織り交ぜた作品だというが、その境界線を
    全く意識させない怒涛の展開が素晴らしい。
    大統領の思惑と言動、完全に “外交負け”している日本の政治家など
    “あるある”感満載で説得力ありまくり。
    息もつかせぬ緊張感と無駄のない台詞、巧みなキャラの配置によって
    たっぷりと伏線が張られ、驚きのラストまで一気に見せる。
    私には初めて拝見する役者さんも多かったが、そのあまりのハマりっぷりに、
    もうこれ以外の配役が考えられない。
    3か所の出入り口を生かしたスピーディーな出ハケと場面転換の巧さにも感心した。
    繊細な照明も素晴らしい。
    それにしても終盤のあの演出、もう一度別の角度から彼の表情を見てみたい。


    ネタバレBOX

    1996年12月、レセプションが開かれていたペルーの日本大使公邸が
    “革命家”を名乗る集団に乗っ取られ、
    大使はじめ政府関係者や民間人など約600人が人質となった。
    最終的に日本人24人を含む72人が数か月間拘束され続けた。
    「平和的解決」を強く要請する日本政府の要求が通るかに見えた頃、
    ペルー大統領は、日本政府に事前通告もなく特殊部隊を突入させる。
    偶然にも日本人は全員無事に救出されたが、そこには驚愕の真実が隠されていた…。

    日系大統領がヒーロー扱いされたあの当時、強行突入の理由を声高に問うよりも
    人質が無事に帰って来た喜びの報道の方が断然多かったと思う。
    物語は、その隠された真実をドラマチックに描いて
    “何も知らない、知ろうとしない日本人”に鋭い問いを投げかける。

    彫りの深い、陰影のある登場人物が大変魅力的で惹かれる。
    大統領から交渉役に抜擢された国家治安情報局のカタオカ局長(佐川和正)は
    端正な居ずまいと沈着冷静な話しぶりで「静」のイメージだったが、
    大統領のバカ息子を一喝する迫力との鮮やかなギャップが素晴らしかった。
    一方では過去の辛い経験と、それをテロリストに打ち明ける弱さと素直さを見せる。
    彼の心の傷が、人質事件最大の謎に絡むところがダイナミック。

    テロリストの指揮官ホセ(西岡野人)も実に魅力的な人物として描かれている。
    知識と教養を持ち合わせ、交渉役の言葉に内省する謙虚さもある。
    “金は出すが実情を知らない”日本人に対する言葉には説得力があった。
    ほかのメンバーも、強行策を主張するサンチェス(今西哲也)の暴走寸前の緊迫感や
    日本人に興味を持ち、のちにサンチェスを諭すミゲル(藍原直樹)の人の良さなど
    一人ひとりのエピソードが的確で、事件の背景をはっきりと浮かび上がらせる。

    そして常に「ハレルヤ」と唱える神父(林田一高)の、
    人が良すぎて逆に胡散臭いキャラ。
    林田さんが“ただ人の良い神父”を演じるはずはないと思っていたが
    まさかあんなことになるとは予想していなかった。

    しかし当時誰も予想しなかったのは、
    “人質とテロリストが心を通わせるようになった”ことだろう。
    この手の犯罪の解決に最も必要な「理解と共感」は、
    まさに事件現場で実践されていた。
    しかもそれをぶち壊したのは政治家であり、
    その政治家を盲目的に支持したのは日本だった。
    作品を通して、ノー天気なことはそれ自体罪だと思い知らされる。

    ミゲルがサンチェスに言った言葉が忘れられない。
    「誰かのために死ぬんじゃなくて、誰かのために生きるんだ」
    およそ政治家には、どちらも思い及ばないことだろう。
    「自分のため」にしか動かない人種だから。

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    2015/07/21 20:20

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