父と暮せば 公演情報 こまつ座「父と暮せば」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    素晴らしい!
    7年振りに観劇しましたが、改めて名作だと思いました。心に沁みました。

    ネタバレBOX

    広島の図書館で司書をしている福吉美津江が図書館に通い始めた木下という原爆の資料を収集している大学の助手の男にふとときめいたことから、逆に普段から肝に銘じている自分は幸せになってはいけないという思いが強まり、それが原因で父竹造の妄想を見るようになり始めてから数日経った1948年7月27日(土用の丑の日・火)から7月30日(金)までの四日の間に、父親との会話を通して幸せになってはいけない病が癒され、木下との結婚を決意し、もうこれで父親の妄想を見なくなると自覚するまでを描いた話。

    広島の昔話が取り入れられるなど細かいところにも気配りがされていましたが、全てが伏線として繋がっていました。子供たちに昔話を読み聞かせをするのが彼女の楽しみですが、なぜ司書の職に就いたかというと福村という同級生と民話の研究会を作ったことがきっかけでした。福村は原爆で死んで、美津江はたまたま福村への手紙を落として拾おうとしゃがんだことで灯篭の陰になって助かったのですが、福村の母親に会ったときになぜ自分の子が死んであんたが生きているんやと言われたことから幸せになってはいけない病にかかったかのように思えました。

    しかし、違っていました。出がけにB29の飛来を竹造に伝えたのが美津江で、竹造はまともに原爆が爆発する瞬間を見てしまい、しかも家の下敷きになって助けることができず、火が近付くに伴い父親を見殺しにして逃げてしまったことによる自責の念にかられたことが本当の原因でした。真相を知って驚いた父親から、次の世代、さらに次の世代へと命を繋ぐことを願った納得づくの死であったことを聞かされ癒されました。

    木下のために風呂を炊きに下手に下がる竹造と、それを見送り、トラックの音にうきうきする美津江の姿から、父親との別れを自覚し、木下との結婚を決意したことが窺えました。

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    2015/07/19 07:52

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