僕の中にある静けさに降る、騒がしくて眩しくて赤くて紅い雪 公演情報 天幕旅団「僕の中にある静けさに降る、騒がしくて眩しくて赤くて紅い雪」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    カラフル版
    本当は両方観たかったが、初演を観ているのでカラフル版を観劇。
    文字通りカラフルな舞台で衣装も大変美しい。
    初演の時も、毛糸の赤い血やゴムで形作る鏡の枠などに感動したが
    今回のアイデアもまた素晴らしく繊細で効果的。
    スローモーションの安定感と美しさ、計算された緻密な動き、
    音響と照明の効果も素晴らしく
    スピーディーな展開であっという間に平和な日常は崩壊する。
    初演の時は「日常を喪う怖ろしさ」が印象に残ったが、
    今回のカラフル版でビシビシ伝わって来たのは
    「守ってあげられない自分、守ってもらおうと思っていない女」に対する
    絶望と怒りだった。
    “大人の男”としての王子に対する嫉妬と敵意をむき出しにした小人の心情が超リアル。
    ハッピーエンドどころか誰もハッピーにならない白雪姫、でも私はこの方が断然好きだ。

    ネタバレBOX

    一段高く四方囲み舞台が設えてあり、色とりどりの布が敷き詰められている。
    舞台下、四隅には小道具が整然と用意されていて、この劇団らしい几帳面な印象。
    登場した4人の役者さんはみな裸足で、それが布を敷き詰めた床に相応しく柔らかい。

    女王も白雪姫も、そして七人の小人もストールで装う。
    特に多重人格の小人はストールの色で人格を表現、めまぐるしい変化が
    視覚にも訴えて来る。
    モノクロ版では表に出すまいとする感情がくっきりと浮かび上がった。
    カラフル版では人の心の多様性に焦点が当てられているように感じた。

    “多重人格の小人”という衝撃的な設定の素晴らしさはそのままに、
    そうせずにいられなかった小人の孤独と、それ故に白雪姫を失いたくないという欲望、
    王子に対する敵対心や、自分を子ども扱いする白雪姫に対する怒りと悲しみが
    プリズムのように現れるところが素晴らしい。

    女王が己のしたことを悔いてとどめを刺さずに立ち去るところ、
    本当は継母に愛されたかった白雪姫の、指先まで神経の行き届いた動きの美しさ、
    王子の善人というだけでない、どこか小人のコンプレックスを見透かしたような
    勝ち誇ったような上から目線、
    それらがキャラに奥行きを与え、登場人物を一層立体的に見せる。

    冒頭に逮捕された小人を提示し、そこから時間を巻き戻す構成が成功して、
    “サスペンスファンタジー”の名にふさわしい見事な本歌取りになっている。
    このあっと驚くような、それでいて極めて人の心に忠実な設定こそが、
    天幕旅団の真骨頂で作・演出の渡辺望さんの豊かな発想力が存分に発揮されている。
    衣装のセンスの良さや効果的な照明も相まって、チーム力の高さも天幕の魅力だ。
    舞台の下で待機している時の、あの表情もまた見たくなる4人なのである。

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    2015/07/12 19:01

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