満足度★★★★
なかなか興味深い作品
「ばらの騎士」といえば、クライバー・ポネル版が圧倒的に有名でここに極まれるという感があるようだ。
今回の作品は勿論そんなカリスマ的な評判はないし、新国としても大がかりな宣伝は展開していない(少なくとも一般的な印象としては)
しかし、この「ばらの騎士」は演出の姿勢として非常に好感が持てる。
田舎者貴族が巻き起こすドタバタではなく、(演出家がインタビューで述べているように:パンフ参照)ウィーンの治世の曲がり角を捉えている。
テーマは「時」。
”恋愛””社会制度”の移ろいを軸に、見事に淡々とそれを浮き出させて見せている。
若者の移り気や
元帥夫人の毅然とした態度と、揺れ動く女心を見事に演出し切れていた。
これを社会の変遷に見立てやすいように易しく表現している。
今さらながら、オペラを”芸術””音楽”と思い込んでいる日本と、そこに込められたメッセージを読み取ることを求めている文化先進国とのギャップを感じる。
この作品は演劇好きにも十分に堪能するに値する作品だと思う。