満足度★★★★★
さすがの公演…
当日パンフとは別に、本公演で描かれる当時の状況(年表)や台詞(語句)の説明が書かれた別冊付録が添えられ、正確に伝えようとする姿勢が好ましい。
さて、公演は朝鮮半島を舞台に戦中(1941年)から戦後の朝鮮戦争(1953年頃)という特異な状況下における人間ドラマ。上演するには、現在の国家間情勢を考えると躊躇しそうな題材であるが、そこはしっかり向き合い重厚な作品に仕上げていた。戦争中という極限状態における不条理が丁寧に描かれ、観ている人の心魂に響く。多くの人は、誠実でありたいと願うところだが、その判断基準は時と状況によって異なる。それでも自分の信念を貫けるか…。
「残酷な事実・現実」と「釈明する動機・状況」の溝を埋める術があるのか。過去から現在にも続く怨嗟の連鎖…人間の尊厳、国家間の友好などの美辞麗句は建前だけ。その深い溝を覗きどのように埋めて行くかを考えさせられた。
その舞台は、後方に変形回廊のような階段舞台(時空間差の表現か)、前方に平舞台(床・地面)で、その状況が重層的に描かれる。また、当時の重苦しい雰囲気は、モノトーンの照明や低(重)音響等の技術で素晴らしい効果を上げている。もちろん役者の演技も確か。
本当に素晴らしい公演で感動した。
次回公演も期待しております。