満足度★★★★★
個の魂VS政治の愚
ハードルがどんどん上がる宿命を背負う劇団になったチョコが、
シアターイーストの広い空間をどのように見せるのか楽しみにしていた。
正統派の構成、性善説に則ったストーリーと、奇をてらわない作りながら
日韓双方の国民の思いが粒立ったように鮮やかに描かれる。
強烈に脳裏に焼き付いたのは、浅井伸治さん演じる朴(パク)青年。
その姿勢、声や肩からも、誠実さと信念がこぼれるようで本当に素晴らしい。
今日本で一番軍服の似合う俳優(と私が勝手に思っている)佐瀬弘幸さんはじめ、
艶のある声で権力を語る大内厚雄さん、人間味溢れるオヤジを演じた辻親八さんら
充実の役者陣が繰り出す無駄のない台詞が、わかっているのにこうも泣かせる。
こういう題材を選んで、無難で浅いだけの作品にならないのは
登場人物全ての人の本音を、隠さずきちんと言わせているから。
その上で“完璧でない理想像”豊川(佐藤誓)に
終盤あの爽快な台詞を言わせるから効き目抜群。
私の中で間違いなく2015年の忘れられない1本になった。