紅白旗合戦 公演情報 Aga-risk Entertainment「紅白旗合戦」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    Aga-risk Entertainmentは期待を裏切らないね!
    卒業式における「日の丸・君が代」の、コメディ(!)
    Aga-risk Entertainmentが、お得意の、会議バトル・コメディだ。

    ネタバレBOX

    新作が発表されるごとに、Aga-risk Entertainmentのレパートリーが増えていく印象。
    これも卒業時期に再演・再々演されても、また観たいと思わせる作品だ。
    学校の演劇鑑賞会とかにもいいよね。

    とても気持ち良く最初から最後まで笑い、楽しんだ。

    「卒業式における日の丸、君が代」という、一見すれすれのテーマに対して、正面からぶつかるのではなく、巧みにそれを観客に意識させながらコメディに持ち込むというセンスがいい。

    東京大空襲前日(!)という恐ろしい設定のコメディ『大空襲イヴ』や孤独死の現場を清掃する特殊清掃員を描いた『無縁バター』など、どちらもタイトルからして痺れてしまうテーマからの発想、視線がうまいカンパニーである。
    その部分を直接触るのではなく、観客には「直接部分」を頭の中に浮かべさせながら、その「周囲」の「面白いところ」に触れていくというセンスの良さがある。

    今回の作品も、「紅白旗」って、結構毒吐いてますよね(笑)。下手したら街宣車がサンモールスタジオ前にいてもおかしくない……はないとしても、このセンスからもAga-risk Entertainmentの面白さが始まっている。
    「国旗と国歌で泥仕合」「右も左もわからない」ていうリード文も好きだ。

    生徒の自主的な活動を妨げるモノに対して、ということでは、イデオロギー論争ではある。
    しかし、「(いわゆる)政治的イデオロギー論争」ではない。

    当然観客は、「日の丸・君が代論争」は頭にあるので、そこに熱くなる左派教師の饒舌さに笑い、生徒と教師の意見の「逆さ」にも、また笑うことができるのだ。

    Aga-risk Entertainmentは、チームプレイの劇団だ。
    個人の力が発揮されるが、チームプレイを大切にしているように思える。
    それぞれのポジションがしっかりしていての、戯曲なので、観ている側にも安心感がある。
    きれいに台詞や演技のバスが渡るさまは、観ていて楽しい。

    そういう意味でも「会議」という設定は、とても効いていると思う。
    過去作品の『ナイゲン』はもちろんこと、『時をかける稽古場』だって、会議モノですよね。

    少々、役者のパターンが固定してきたように思えるが、それがいいところも、ある。
    たぶん、観客のそれを刺激するのが、「委員に口の達者な淺越くんがいます」の台詞だ。
    過去の作品、特に『ナイゲン』を観ている観客にとっては、手を叩いて笑うところだ。
    だって、最初のメンバーに彼がいないのが不自然なんだもの(笑)。

    ただし、1人だけ得をした淺越くん(部屋を2つもらった?)は、もっと屁理屈、いや、ディベート、じゃなくて弁論を振るってほしかったと思う。まあ、村松先生とのバトルはなかなかではあったが。
    観客の多くも、それを期待していたのでは。

    今回の作品では、「おっ!」と思ったシーンがある。
    校長室に押しかけるシーンだ。

    校長室内での会話と、「どうやって校長室に入り、メンバーを集めるか」という話し合いが、渾然となるシーンで、ここには演出のうまさが炸裂していた。

    後半に向かって、畳み掛けることが必要なシーンなので、本当にここのリズムとスピードがいい。
    観客が深く考える前に進んでいる。
    このリズムでラストに引っ張るというのは、もの凄くうまい。
    もちろん、今までの作品でもスピード感を出していた演出はあったが、これほど印象的、かつ違和感のない演出は素晴らしい。
    演劇ならではの演出であり、舞台をライティングで区切って、さらに場所や時間の移動をさらりと見せる演出の集大成とも言えるもので、新しいワザを手に入れたのではないだろうか。

    なので、さらに次回作も楽しみになってしまう。

    ラストに、生徒会長・熊谷が、やっぱり手を挙げないというのも、好感が持てる。高校生は大人なんだから、そう簡単には丸め込められない。そして、基本、左派教師村松と校長以外は「日の丸・君が代」の扱いなんてどうでもいいと思っているのだろうし、会議は早く終わらせたい、というのが心の中の本音だろう。
    なので、折衷案が出てくれば、一気呵成に全員が乗るという図式はわかりやすい。
    生徒たちには、「あんときは、燃えたよねー」「熱く語ったよ」という「思い出」が残ればいいということなのかもしれない。というのは、高校に熱くならなかった者のひがみなのかもしれないが(笑)。

    今回の作品では、それぞれの先生たちと、生徒たちとの距離感がきちんとわかる戯曲も、生徒と教師の演技もうまいのだが、教師のほうの役者さんたちが特に印象に残った。
    1人ひとりが「いそうな」先生であり、ブレがない。最小限の人員で、必要なキャラクターを揃え、無駄も隙間もないのだ。

    特に、左派社会科教師・村松を演じたボス村松さんは、自身の劇団・鋼鉄村松でも見せたことのないような、伸びやかで、活き活きとした演技がとても良かった。「日の丸・君が代については、言いたいことがある!」という前のめり感がよく出ていた。
    菊池先生の菊池奈緒さんも、いいキャスティングだ。全体的に浮き足立ちがちな、こういう作品の中で、きちんと押さえるところがうまい。杖の演出が効いているのかも。

    個人的には、塩原先生のような、「いいこと言ってるでしょ」という、したり顔で、みんなをまとめようとする先生は嫌いだ(笑)。いや、役者さんとか演技ではなく、そういう人っているよねー的な意味で嫌いなのだ。なので、演じた塩原俊之さんが、うまいということでもある。

    それにしても、作・演の冨坂友さんって、出身高校LOVEなんですね。
    個人的には、卒業式とか、学校の行事などでこんなに熱くなる気持ちは、まったく理解できないんですけどね(笑)。

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    2015/03/24 06:53

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