満足度★★★
死×死
真っ赤な照明に照らされる殺戮の場面。
繰り返し繰り返しコンクリートブロックを男の頭に振り下ろす女。
それを見守る女の子と男の子と、蟹。
事故で生き残った夫婦と、生き残った両親が死のうとしている様を見守る亡くなった兄妹、蟹。
家族と、蟹。事故は蟹鍋の最中に。
わたしの位置からは見守る二人と一匹の姿は、見えなかった。
見えなかった分、どんな思いで見守っていたのかなと思い巡らす。
思い巡らす余地のある、語りすぎない静かな芝居でした。
夫婦の二人が、若さにそぐわぬ、その若さにでこんな空気感出す!?っていう素晴らしさで。
あんなに静かな芝居なのに、全く退屈しなかったです、ヒリヒリしました。
あの夫婦は、あぁして、悔恨の念に囚われたまま、死ぬより辛い同じ時を繰り返し続けるのだろう。
モンゴルズシアターカンパニー『鼠』
全く存じ上げなかった、未見かつ未知な劇団さん。
でもイベントに大阪代表で選ばれたというのだから、それは期待が高まるというもので。
これが火ゲキの妙、奇しくも対バン同士でテーマが被る。
人の死、不吉の象徴である真っ赤な照明まで被る。
暗闇の中、懐中電灯片手に何か探し物をする男性二人。
二人は地下鉄の駅員、探しているのは電車に轢かれて亡くなった人の遺体。
なにせ電車に轢かれたのだ、どんな状態になってるかわからない。
ただただ匂い、血の臭い、生肉の臭いだけが立ち込める暗闇の中、そんな遺体を探すのは恐怖だろう。
男性二人は、その恐怖から逃れようと会話をし続ける。
対岸の火事とばかりに、電車が動かず恐らくは苛立ちながら、野次馬心理も潜めながら、早く見つけろよと何も悪くない駅員二人を、沢山のその他大勢が明るいホームから見下ろしている。
そんな情景がまざまざと、ふたりの会話から脳裏に浮かび上がる。
そんな極限の心理状態の中で、正気と狂気の狭間の中。
探し物は鼠に群がられた状態で見つかる。
あまりに凄惨、あまりに陰惨とした気分にさせられる舞台。
イベントでは、もう少し楽しいのが観たかったという感想を頂いたのだそうな(笑)
ダーク部門という分野があればよかったですねぇ。