独りぼっちのブルース・レッドフィールド 公演情報 ポップンマッシュルームチキン野郎「独りぼっちのブルース・レッドフィールド」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    彼はどんな思いで引き金を引いたのか。
    ポップンマッシュルームチキン野郎(PMC野郎)初観劇。
    以前からコメディフェスティバルでの活躍ぶりを聞いていながら、
    今まで観れていなかった。

    ネタバレBOX

    とても良く出来た戯曲、物語で、エンタメとしても演劇としても、
    肩肘張らずに観れながら、色んな楽しみがあって、素晴らしい。

    西部劇というのはある程度固定のイメージが定着したジャンルで、
    そこが魅力的でもあるし、そこからどう描いていくのかも重要。

    PMC野郎は初観劇だったので、
    本公演で毎回どういったテイストなのかは分からない。
    だが今回、たとえしゃべるサボテンやサソリやナップサックが出てきても
    その不条理に違和感はなく世界観へ入っていけた。
    それ以外にも普通に笑える部分も多々あったし、飽きない。

    腕の立つガンマン、ブルース・レッドフィールド(渡辺徹)は
    25年前にギャングに家族を皆殺しにされ、
    それ以来、犯人たちを探して復讐の旅を続けている。
    唯一の弱点は、ギャング襲撃の際に負った後遺症により、
    至近距離で銃声を聞くと記憶が25年前に戻ってしまう
    記憶障害を持っていること。

    この設定が物語を楽しむ核となっている。
    一発で仕留めなくてはいけない。
    一つ復讐を終える度に25年間書きためた日記を読み返しては
    記憶を取り戻す等々。

    ただミステリーの様な謎解きを求められる話ではないので、
    西部の復讐劇に思わぬ展開が、といった感じで
    そのまま素直に観ていくと楽しいのではないかと。

    ブルースにあこがれるサボテンジョー(サイショモンドダスト★)と
    サソリのスティーブマック(野口オリジナル)、
    彼らをまとめるナップサック(NPO法人)。
    同じギャングに家族を殺されたネイティブのヌータウ(加藤慎吾)と
    妹のアナ(増田赤カブト)。
    ブルースのライバルを称するジャンボ・ジャンゴ(CR岡本物語)と彼の弟分、ジャイロ(古舘佑太郎)、ジャック(高田淳)。
    保安官事務所で出会った男装のフランス人、フランソワ(小岩崎小恵)等々。
    この一緒に旅を続けるキャラクターたちの魅力も
    中心となっているPMC野郎の劇団員の皆さんはじめ素晴らしいし、
    主演の渡辺徹さん、萩野崇さんをはじめとする客演陣も好演だった。

    この復讐劇が、
    真実が判明した際には全く逆の意味を持った復讐となっており、
    その悲しみと苦しみが心を揺さぶってくる。

    若い頃から、家族を持って汚い仕事からは手を引き
    「善人でいたかった」というブルースの想いが、
    死に物狂いの旅の果て、最後の引き金とともに、
    全ての憎悪の記憶の繋がりをも断ち切る。
    その思いに対し応える、ブルースの昨日までの敵であり今日の友。

    最期の時を迎えて果たして彼は、
    本当に25年もの記憶が消えたままだったのか。
    そんな想像の余地を残すようにも思えたところも
    演劇として好きだし、本当に面白かった。
    良い時間を過ごせて、自分の中では
    西部劇で一番好きな話になったと思う。

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    2015/02/26 15:38

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