必要とされている、と思う病気 公演情報 箱庭円舞曲「必要とされている、と思う病気」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    必要とされている、と思う病とは何か。
    やっぱり箱庭円舞曲は好きだし、凄い。

    ネタバレBOX

    主宰で作/演出の古川さんが
    実際に結核に罹患した経験が元とのこと。

    結核という病に対するだけでなく、
    病院での入院生活、
    病院で働くこと、
    社会から外れまた戻ること、
    必要とする/されること等々
    色んなものを内包しながら、
    自然と見応えのある作品となっていた。

    まず中年患者の永源(清水大将)の態度から
    患者が必ずしも弱者ではないという
    一般的なイメージの覆してくれるのが良い。
    他の場合でも当てはまるが、
    医療というサービスを受ける側が
    「客である」という姿勢を傘にしたとき、
    提供側を破綻に向かわせることもあり、
    非常に難しい問題だと思った。
    そんな永源もラストで
    散々嫌がっていた病院から退院する際、
    表の世界へ行くのを「地獄への帰還」と表現する。
    病院や医師を散々批判されるが、
    それでもある程度守られている皮肉がじわっと伝わる。

    彼も含め入院によって
    社会の流れから外れたという視点では
    戻りたい者、戻りたくない者の事情も
    じんわりと浮かび上がってくる。

    高校教師の岡(家田三成)は、
    結核を生徒に罹患させたことによるトラブルが炎上し、
    休職扱いとなっている。
    戻る場所ももはや無いも同然で、
    それによって彼を病院から出たがらない。
    彼の飄々とした様子とは真逆の悲哀が
    やるせなく、とても芯に響く。

    矢久保(大塚宣幸)は保険をギリギリまで
    受け取って楽をしようと病院側を困らせる。
    そんな彼も一度表の世界へ戻って再度病院に帰ってきた時に
    自分の存在の必要性についての現実を思い知らされる。

    看護師側でも
    ベテラン師長の八重津(ザンヨウコ)、
    中堅で派遣扱いの村川(前田有貴)、
    新人正看護師、恵(白勢未生)も
    それぞれの立ち位置や仕事や患者への向き合い方で
    齟齬や行き違い、トラブルが生まれる。
    新人の立場も分かるし、それを教育するベテランの悩みも分かる。
    ラストで死なせてしまった患者に対して、
    新人の恵が辞めるなどと言い出さなくて良かったと思った。
    辛いことから簡単に逃げ出すことは容易だが、
    それでも向き合っていこうとする微かな希望が
    若い方へ繋がるように感じられた救いだったような気がした。

    何故か結核に罹患してしまった更科(石松太一)が、
    作家の古川さんにも観客の視点にも近い立ち位置だろう。
    彼は他の患者より真面目に入院生活をして、
    すんなり治りそうだが、お笑い芸人として
    トリオの二人から見限られて戻る場所を失くし、
    唯一残ったのが彼女のフリをしていた熱心なファンの二ッ森(松本寛子)。
    藁にもすがる思いで彼女に必要とされることを取るのか。
    それとも別の茨の道を進むのか。
    これは投げかけられた問いのように思えた。

    互いが相容れないことによって生まれる、または生まれないものが
    伝えるものをしっかり伝えながら、想像力を掻き立てられ良かった。
    役者全員が見事に人物を活き活きと生かしていたのもそうだろうし、
    戯曲や演出の巧さもあるのだろう。

    大塚宣幸さんは破壊力抜群で
    下手なお笑い芸人よりもはるかに面白いし、笑わせてもらった。
    しかも芝居を破綻させずに上手くその魅力を出されていたな、と。

    白勢未生さんは純粋無垢な若者を演じられて、
    色々な事象に振り回されながらも
    何とか懸命に立ち回る様が良かった。

    0

    2015/02/22 01:01

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大