南へ 公演情報 青年団「南へ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★

    Aチームを観劇。説明不足が過ぎる。/約110分
     観る人それぞれに様々な感慨を引き起こす作品なのではないか?
     初演から四半世紀を経て再々演されるこの劇について作・演出家はそう言うが、これは裏を返すならば、どう受け止めるかを客にほぼ丸投げしているということ。
     実際、母国からとある南島へ移住するため船旅の途上にある富裕な日本人達がどんな動機でどんな島へ渡るのか、当人達はほとんど語らず、それを我々は推察するほかない。

     これは不親切に過ぎるのではないだろうか?

     冗漫な詩談義に多くの時間を割くくらいなら、その時間を使い、南島へ渡る理由を各人にもっと語って欲しかった。

     初演時はバブル期の真っ只中にあり、本作は異常な好況がさらに進んだ近未来を描いている。
     当時の日本への強い怨嗟を込めて書いたと作・演出家が言うだけあって、好況を背景に思い上がっている日本人が悪意たっぷりに描かれているが、新天地へ向かう彼らはどういうわけか一様に倦怠感を漂わせ、何かに苛立っている様子。新天地への期待感はあまり窺えない。
     その理由も私にはつかみかねた。

     多賀麻美さん演じる底抜けに陽気な女の子がたいそう魅力的でした。

    ネタバレBOX

     外国人やハーフの船員がいるにもかかわらず、船内は日本語以外使用禁止。
     船客の中には外国人への嫌悪感を口にしてはばからない貴婦人もいて、船客達が日本を去る理由の一つが、バブル景気が日本へと呼び込んだ無数の外国人労働者への嫌悪感であることが窺い知れる。
     彼らは移住先の南島に日本人だけの楽園を作ろうとしているのかもしれない。

     作・演出家は本作を今このタイミングで再演することに意義を感じているようだが、本作に現代性を見出すとするならば、船客の多くが“思い上がった富裕層”であるという点だろう。

     彼らは外国人への、とりわけ、かつて征服を試みたアジア諸国の人々への強い差別意識を抱いているが、格差社会化が進む今、この差別意識が外国人でなく、同じ日本国籍を持つ“貧民”へと向かったら……

     そう考えたらゾッとしたが、ひょっとするとこの想像はもはや現実になっているのかもしれない。

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    2015/02/16 17:03

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