暗く暖かな日々 公演情報 小松台東「暗く暖かな日々」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    今作も言うまでもなく宮崎弁演劇です。/約100分
     いつもは小品の趣がある小松台東作品。
     が、今回はいつもよりスケールが大きい印象を受けた。
     これまでの多くの作品と同じく家族を扱い、上演時間もこの劇団としては平均的な約100分、小屋も小さめなOFF・OFFシアター。家族という小集団を描き、尺もほどほど、会場も狭いのに、デッカい印象を受けたのは、今作が内藤家の未来、ここでは途絶えずこの先も続くであろう一家の歴史を予感させる内容を持っているからに他なるまい。
     余韻を残すような終わり方は一家の「この先」を否応なしに想起させ、じんわりじわじわと感動が込み上げた。

     タイトルに「暗く」とある通り、色んな事が重なって内藤家の面々の胸の内はきっとどんよりしているに違いない。
     それでも舞台上に騒々しい時間が流れて彼らが時には白い歯を見せ、客席にも笑顔が咲くのは、色んな人々が内藤家に出入りして茶の間に明るさを持ち込み、家を活気づけるからだろう。
     なんだかんだありながらも内藤家がお家断絶を免れそうに思えるのは、この「内藤家を取り巻く人々」が離散しそうな一家を温かく包み込み、そうとは知らずに束ねているからに他ならない。

     この意味で本作は、チラシにもある通り、まさに「絆の物語」と言えよう。
     このあったかい「絆の物語」に涙したお客さんもおられようが、私は泣くまでには至らず、その代わり大いに笑った。
     とりわけ内藤家の家長・晴夫の部下役の永山智啓、晴夫の友人役の瓜生和成の交わすスッとぼけたやり取りには爆笑!
     そして、浅野千鶴さん演じる娘があたかも素で笑っているかに見えるいくつかのシーンには微笑を誘われました。

    ネタバレBOX

     舞台となるのは、母親が入院中のある家庭。
     そこへ別居していた父親が妻の入院を聞きつけてふらりと現れ、「またここに住む!」と言い出して波乱を起こす。
     娘の朋美はその酒癖の悪さで母を悩ませていた父を疎み、「帰って!」とおかんむり。
    朋美の兄・克則も温かくは迎えてくれず、父はイライラ。
     そこで父・晴夫は友人の稲本、会社の部下・関根に援軍を頼んで引っ越しを強行!
     そんな折も折、妻が帰らぬ人となって、内藤家はますます暗鬱なムードに…。

     こうしてあらすじだけを書き連ねるととても暗い話のようだが、稲本や関根をはじめとする一家を取り巻く面々がすこぶる明るく、劇は笑いを誘いながら進行。
     それに、お母さんは亡くなっても、息子の克則にはなし崩し的に家に住みついているカノジョがいて、さらには、稲本が朋美と同級生だったことも発覚!
     劇は克則とカノジョの、そして朋美と稲本の結婚を匂わせつつさらに進み、内藤一族が今後も栄えていくことを暗示しながらどこか前向きな印象を残して終わる。

     日本が国策として推し進めた核家族化はさらに進んで単身世帯の氾濫を招き、日本はまさしく無縁社会となりつつあるが、協調性に乏しく人付き合いを疎みがちな私でも、こういう劇を見せられると今よりは大家族が多く、色んな縁に支えられていた少年時代が懐かしくなってくる。
     

     核家族化、ひいては単身世帯化は人口一人あたりの出費を増加させ、日本の経済発展を促進したかもしれないが、同時に少子化も推し進め、結果的には経済を冷え込ませている。
     目先の利益だけを追い求めると痛い目に遭うという好例だ。

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    2015/02/11 12:07

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