ワンダーランド 公演情報 Straw&Berry「ワンダーランド」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    妙技
    構成の妙に驚いた。

    ネタバレBOX

    二組のある男女とその友人たちにまつわる話。
    並行して二つの物語が展開する。
    登場人物たちの名は同名だが異なった漢字表記。

    二つの物語は似た展開なのだが、微妙な違いがある。
    まるでパラレルワールドのような。

    淡々と物語は進行する。
    劇的な展開のない物語なのかと気を抜いていると、後半でひっくり返される。
    このひっくり返しが実に見事。

    物語内で、主人公の男は駆け出しの小説家で、雑誌に小説を発表している。その小説の題名が『ワンダーランド』。この芝居のタイトルと同じ。
    その発表された雑誌を劇中で友人が読む。友人は最後まで順で読み進めるのが大変なので先にエピローグを読むことにする。最終章よりも前にエピローグを。その伏線があり、この劇自体も、エピローグが先に語られる。それは、登場人物の出てこない。情報だけのもの。一方は留守電に残された母?の言葉で、もう一方はテレビから流れてくる報道。
    それまでの展開から、グダグダな方が悲劇へと至り、うまく行っている方がハッピーエンドとなったのだろうと予想する。
    で、最終章がラストに来て、すべての謎解き。グダグダな方はずっと何かに苛まれ続けている。その痛みがどこから来ているのかは具体的には明かされないものの、過去に殺人事件を犯していたというような情報がちょっとだけ出される。その過去に苛まれ続けているのか、それともあらゆる事象に絶望いたからこそ事件を犯し、今もその中にいるのかはわからない。いずれにしても、苦しみ続けている。そして自殺をしようとするも、死ねない。そんな男を女は全てわかった上で優しく包み込む。そして男は女に結婚し、子供を作ろうという。(彼女と付き合ってからもインポテンツで立たなかったのだ。それは、安易に解釈すれば、子孫という未来に対する希望が失われているということのメタファーかもしれない。それが未来を志向できるようになったという。)一方、うまく行っているように見えた男は、女を殺めてしまう。こちらも結婚の約束をしていたのに。
    共に理由は語られない。だらか想像するしかない。
    この二組の関係は、一方が光で、一方が影。ポジとネガの関係のようにも映る。つまり、一見光の中にいるように見える側の闇が実は深く、闇の中にいる側にも光がある。または、光の中では闇は見えづらく、闇の中でこそ光の輝きが理解できるのだと。
    まぁ、そんな解釈は作品の意味を矮小化しているだけかもしれない。
    多様な解釈や想像を観客に想起させる仕掛けとして、劇的な結末に至る過程をすべて空白にしたところが、何よりも素晴らしい。
    それも物語構成の順序を入れ替えることで、その空白を創り出していると共に、二つの物語はお互いの中で出てくる小説『ワンダーランド』を演じている劇中劇であるかのようにも見せている。その点も秀逸だった。どちらがどちらの劇中劇とも規定できないメビウスの輪のような仕掛け。凄い。

    河西裕介氏の物語構成の妙に驚いた。

    おまけ演劇も安定の高クオリティ。

    <※2015.2.28 追記>
    未読のため気づかなかったが、
    村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』もパラレルに進行する物語のようだ。「ワンダーランド」はそこにもかかっているのだろう。

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    2015/02/07 13:20

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