夜と森のミュンヒハウゼン 公演情報 サスペンデッズ「夜と森のミュンヒハウゼン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    幻視の内に焦点を結ぶラスト
    うまい作りだと思いました。サスペンデッズ3公演目。最初が震災時、次が一昨年。インターバルが長い。たまに観てみたくなる劇団です。
    考えて書いてるな、という印象がまず。(私のみた)1作目と2作目の色合い、雰囲気が全然違うその違いに驚き、今回のも、あと新国立劇場に書き下ろした芝居も、類似点より差異に目がとまる。では共通するものは何かと言うと・・伏線を静かに置いて解決せぬまま謎が長時間放置され小エピソードが進む、割と最後に大きな謎解きがあって結構引っ張るその間合いが似ている。つまりよく考えて書かれてる感じがする。だが、この芝居の面白さの中心が「伏線とその解消」かと言えばそうではなく、きっちりとその作品なりの世界(その中でドラマが起こる)をこまやかに成立させ、人物たちの関係から立ち上る空気感が「おいしい」芝居に仕上がっている。今回は吉祥寺シアターのタッパに加え、奥行き感もあって「森」の深さを感じる事ができた。今思えば、「森」の空気感に関する非言語情報が、行為の端々に盛られていたように思う。主人公は「森」であった、と言って良いかも知れない。

    ネタバレBOX

    このお話の最後に解かれた「謎」の答えは、残酷だった。
    だがそのギザギザとした黒いものを包み込む「何か」を担保しながら、美しいシーンが現出した。きっと自信作だろう。てがみ座の石村みかが「らしい役」(看護師)を好演し、最後、佐野陽一演じる不思議な存在と対面して「説明」を聴くシーンは、静かで地味でだが、一つのクライマックスである。
    芝居は大変印象的なラストで終わる。われわれ今を生きる人間が如何に苦痛の中にあろうと、等しく死者から何かを得ている事実は普遍であるように思われる、その事を示唆する残像。都合の良い解釈(死人に口無し)であれ、(死者との関係についての解釈は)誰しもが心に抱く事を許される幻想であり、倫理的にそうすべきであるとさえ思われる。最後に解き明かされた「世界」(死者との関係を育む場所)は看護師の想念の中に作り上げた空想=非現実のようでありながら、そうではなさそうだ、という所がミソである。「謎」が解かれた後もその世界の住民である彼はそこが空想上の世界だとは認めない。実在する事実をあくまで言い続けるのだ。その事がこの芝居に骨を与えている。よくあるファンタジーものの夢落ちとは、一線を画した。

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    2015/02/03 15:31

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