議題:ギタイ 公演情報 多摩美術大学卒業制作展 めっけ!「議題:ギタイ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    センス抜群
    舞台の始まる前に、中央奥に映し出されていた、昆虫の頭をイメージさせる赤い映像は、舞台側面に位置をずらされ、而も1灯ずつ灯されて、昆虫の複眼を拡大したようなイメージに変わる。それ迄、流されていた鳥の囀りや獣の鳴き声、牛の鳴き声などの代わりに、蠅の飛翔音などが、時折流れる。

    ネタバレBOX

     
     注目すべきは、この不愉快な感覚が、何とも言えぬセンスの良さを感じさせる点である。そう言えば、舞台のある2階へ上がると入り口に左側頭部に等身大の面をつけた女性が出迎えてくれる。この趣向も大変気に入った。シナリオ、演技、演出、美術、音響など総て独りでこなした古澤 禅は、身体の鍛練も相当キチンとやっているのが、その機敏な動作や柔らかくしなやかな動きから分かる。静止の時、バランスが若干乱れた所があったが、これも訓練次第でどうにでもなろう。
     身体パフォーマンスにかぶさる映像・照明や音響とのコラボレーションも素晴らしい。また、古澤 禅が、他でも無い蠅の飛翔音を問題化しているセンスに注目すべきであろう。当然、パスカルが「パンセ」で指摘した集中を途切れさせる不愉快な音と黴菌を撒き散らす恐れ、神学的には、サタンの副官・ベルゼブブをイメージしてもいよう。所謂「蠅の王」であり、ゴールディングの小説のタイトルにもなっているから、知っている人も多かろうが。
     更に、地球上で唯一、絶対悪を生み出す存在として、人間を扱っているのが良い。その人間という生き物は、頭の中が空っぽで収奪など悪知恵だけを働かせて、他の総ての生き物に大きな打撃を与え続けているのだが、唯一の救いは、その人間にも天敵が存在するという事実である。而も、その天敵が如何なるものかは、敢えて観客の想像力に委ねられている。

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    2015/01/26 23:35

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