満足度★★★★★
リアルと寓話の絶妙なバランス
久しぶりに、芝居を観て本当に満足した。
過不足なく、文句もなく。
満ち足りた気持ちで劇場を後にしました。
リアルとファンタジー(と言っていいのか分からないけれど)が
ほどよい加減で混ざりあっていて。
混沌と、しかし美しく溶け合い、昇華していった気がする。
曖昧ですが。
たとえば、このテーマををリアリティーだけで構築することも出来ただろうと思う。
ただ、そうすると、震災と父子の葛藤はすごく生々しく重たく感じられる気がしていて。
それを「鬼」という比喩を通して語ることで緩和しつつ、
観客それぞれの胸の中にだけ存在する、鬼のイメージや震災から想起される思いを、板の上に積み上げていく。
その過程が鮮やかで、素晴らしかった。
ものがたりを、現実と非現実の狭間の絶妙なポイントに巧みに誘導していた末原拓馬という役者の表現力の豊かさには、
相変わらず舌を巻く思い。
子役をはじめとした、周囲のキャストも本当に素晴らしくて、
なんのストレスもなく、作品に没頭できた。
おぼんろの良さとナイスコンプレックスの良さが、良い化学反応を引き起こした…そんな気がした。