こわれゆく部屋 公演情報 水素74%「こわれゆく部屋」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    会話主体の派手さに乏しい劇の中に様々な人間ドラマが…/約90分
    ある家庭を舞台に展開される、会話主体の派手さに乏しい劇の中に様々な人間ドラマが織り込まれていて、おおいに引きつけられた。

    説明文に示されているテーマとは無関係に思えるエピソードもあったが、それも含めて面白い。

    この劇団を観るのは前作『コンタクト』に次いで二度目だったが、前作のようにSF味がなく日常劇に徹している今作のほうがこの団体にはお似合い。

    ネタバレBOX

    両親がすでに他界し長女と年下のカレシが二人きりで暮らす家に、長らく家出状態だった次女が男連れで帰ってくる話。

    次女のカレシ面をしている同伴者が実はホストで、ツケの回収のため次女に付きまとっているだけだったとおいおい判る展開がいい。

    ただ、次女とホストは脇役に過ぎず、本作の主題と直接的に関わっているのは次女の秋子とそのカレシである高橋、そして家に遊びに来た二人の同僚・三浦の三人。
    三人は大病院の小児科で共に働く看護師であり、時々起こる、入院していた子供の死をどう受け止めるかをめぐって激しい口論が交わされる。

    看護師としてのキャリアが浅い高橋と三浦は子供が死ぬたび、あまりのショックに食事も喉を通らなくなるが、キャリアが長く子供の死にも慣れている秋子は、子供が死んだ直後にカツ丼を平らげてしまうことさえある。

    人の死が日常である病院という社会に「順応」しているとも言える一方、子供の死という重い事態に直面したとき当然発動すべき感覚が「麻痺」しているとも言える秋子のことを高橋と三浦はなじるが、秋子は「子供が死ぬたびに落ち込んでいたら仕事にならないから悲しみを抑えているだけ。私も実は悲しんでいる」と言い返す。

    このやり取りを聞いて素朴に思ったのは、子供の死を悲しむこととカツ丼を平らげることは両立できるのではないか、ということ。それも、秋子のように小児科看護師として長いキャリアを積んでいるのなら尚のこと。

    日本では通夜の席で酒を飲むのが慣習化しているが、あれが許されるのなら、秋子の行動も許されていいのではないだろうか?

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    2015/01/19 01:03

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