よるべナイター 公演情報 FUKAIPRODUCE羽衣「よるべナイター」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    命ほとばしる、喉から肉体から
    身体ではなく(生きている)肉体を感じる舞台。


    青山円形劇場で観てよかった。
    「ナイター」のタイトル通り、物語の中心に野球があり、円形劇場はまるで球場のようではないか。
    バックネット裏の特等席で観た。

    ネタバレBOX

    青山円形劇場で観てよかった。
    「ナイター」のタイトル通り、物語の中心に野球があり、円形劇場はまるで球場のようではないか。
    バックネット裏の特等席で観た。

    タイトルの『よるべナイター』の、「よるべない」とは何なのかと思っていた。
    舞台の上では、生と性が溢れていて、「よるべない」のは観客なのかなと。

    しかし、ラストへの展開で、1人野球実況中継のサラリーマンが登場することで(単に実況中継をしている人だとてっきり思っていた)、一気に「よるべない」が迫ってきた。

    仕事帰りにコンピに寄って、帰りながらの「1人野球実況中継」。
    うわー、こ、これは……と。

    帰り道で、カップル見て妄想しているサラリーマンなのか。
    と思って、切なさが爆発した。

    それぞれのエピソードが、万が一彼の妄想の産物であったとしても、それぞれが生きている。
    夜の暗闇の中、電球の温かく優しい光が彼らを照らす。LEDじゃない、触れば熱い白熱電球の光だ。

    そんな灯りが、夜の中に、それぞれの「生」を、「命」をぼぉっと照らし、あちこちに見える、そんな当たり前で、ささやかで、平和な夜。
    温かい灯りの下には人がいる。

    そして明日がある。
    命は続く。

    歌がとにかくいい。
    歌詞カードがあるので、あとでじっくり読むと良さがさらに増す。
    メロディが頭の中でリピートする。

    きれいに唱うよりも、心の底から歌詞を絞り出して聴かせようとする姿がいいのだ。
    どのシーンの、どの一瞬を観ても、どの役者も気持ちが口から、いや喉から、いやもっと深いところからほとばしっている。

    日髙啓介さんって、歳取ってからもロックな役者だ。「渋い」とも違う。やっぱり「ロック」だ。歳を重ねるごとにさらにロックで良くなっていくのではないかと思わせる。歌詞とか表情とか、グイグイと心に来る。

    名作、「果物夜曲」は、前に東京芸術劇場の野外で観た。
    なんてことのないストーリーなのに、深井順子さんと日髙啓介さんの一挙手一投足、台詞や歌が胸に迫る。
    なんだろ、この感じ。
    泣きそうになってくるではないか。
    まるで中学生の初恋のような純情さが、中年に差し掛かった2人の間には芽生えている。

    愛というより「恋」。
    恋は人を純情にしてしまう。
    それを真正面からストレートに見せられて、グッときてしまうのだ。

    風俗嬢(小野ゆり子さん?)の純真さのようなものにも触れてしまう。
    夜の、電灯の灯りに照らされる彼女たちは優しい。
    生身の人であることを感じさせてくれる。
    エロスだけでなく、「生きている」ことを感じる。

    全体のテンションがリズムに乗って、激しくビートを打っている中での、森下亮さん演じる実況中継サラリーマンがいい。音楽のリズムに乗っているわけではないのだが、作品全体のリズムを壊すことなく、別世界にいるようだ。
    彼の口調と動きでラストは、さらに染みてくる。

    あいかわらず西田夏奈子さんは歌が上手いし、表情がいい。そして伊藤昌子さんも、あいかわらず表情が良くていい感じに笑わせてくれる。

    私の観た回は、代打の回だった。
    代打には、元プロ野球選手の古田敦也さんが出てきて驚いた。
    明らかに役者とは異質な肉体を持っていて、それがまたいいアクセントになっていた。

    舞台の音楽を入れたCDRは出ているのだが(聞き込んでいる)、ここらでスタジオ盤もほしいところだ。
    できれば、パートごとに録ってミックスするのではなく、「せーの」で録った、スタジオライブ的なものがいい。

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    2015/01/05 05:49

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