吉良にも吉良の物語あり
舞台というのは、残酷だと思う。テレビや映画なら、ワンカットずつの撮影で上手く編集したり組み合わせにより、その魅力が最大限に演出される。編集者の腕によっては、もう別物といったものにすらなりうる。その点、芝居はごまかしが効かない。すぐ目の前には観客がいる。息遣いや汗は全て白日の下だ。セリフをとちったら、やり直しはきかない。今日は気分が乗らないから、なんて途中で中止にすることもできない。The show must go on.やるしかない。ヴェテランも新人も、テレビで売れてるとか知られてないとか、これまでの実績とかそうしたもの全て関係ない。その舞台一回こっきりだ。真の実力が試される。役者として、ひょっとしたら人として、演技力や存在感といったものを問われる。しんどい仕事であり、思うように演じられ、決まったと思えた瞬間は、比べないほどの快感を覚える仕事でもあるだろう。
噂に名高い本多劇場は、初めての来訪。小劇場スゴロクの"上がり"であり、大劇場では最も小さな劇場の部類に入るかもしれない。演劇の聖地というような場所とも聞く。演じるのは、伊東四朗をはじめ名の売れた役者たち。懐かしい名前もあり、名はなくても腕自慢の役者も揃えて、さあ実力拝見!テーマは、季節感たっぷり「赤穂浪士」の吉良一家・・・