遺失物安置室の男/改 公演情報 劇団夢現舎「遺失物安置室の男/改」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    2度目はここが違ってた<2度観>
    “2度観”を推奨している劇団夢現舎、二度目の観劇である。
    「2度来てください」というだけあっていろいろ変えてくるのが夢現舎のすごいところ。
    台詞も増えてるし、ラストの演出も違う、美術もヨゴシを加えているらしい。
    パリでの公演を視野に入れているというが、このタイプは万国共通ではないか。
    そちらはまたどんなふうに変化させるのか、興味津々。
    海外公演バージョンも観る機会があったらいいなあ。

    ネタバレBOX

    男がバイオリンと交わす会話がさらに加えられている。
    切々と“安置するより弾いてほしいのだ”と訴えるバイオリン、
    それを一生懸命説得して厳かに安置する男。
    不思議な言語で交わされるこのやり取りは、黒子によって文字で示される。

    崩壊した彼の城と衝撃のラストのあと、天井から降ってくる白い紙片。
    「あなたは安置されました」という言葉が書かれた紙が、客席にひらひらと舞ってくる。
    そうか、私は持ち主が手放した引き取り手のないモノになったのか。
    持ち主は誰だ?
    その持ち主は自分で自分を証明することができるのか?

    モノを偏執的に愛し、一方的に愛情を注ぐ人は多い。
    コレクションという形で所有したがる人もたくさんいる。
    だがモノの声に耳を傾けるという謙虚さを持ち合わせている人は少ないだろう。
    荒廃した心が引き起こす事件の数々や、環境問題、自然破壊など
    謙虚さを失った人間の過ちが次々とカードで文字になって提示されると
    改めて日頃自分がないがしろにしていることに思い至る。

    これは私個人の問題かもしれないが、無言のやり取りが続く間、
    時々集中力が途切れそうになってしまう。
    後半、バイオリンの音や娘の「お父さん、思い出して!」と叫ぶ声が入ると
    やはり空気がピリッとする。

    忽滑谷氏の謎に迫るエピソードも知りたくなる。
    キーワードが抽象的・観念的なので、彼の存在に現実世界との接点が見えたら
    ラスト、あの選択の衝撃がより身近に感じられるかなと思った。

    しかし同時に、この観念的な世界を舞台に上げてかたちを与えようとする、
    この劇団の取り組みにはいつも感心させられるし、独自の世界は素晴らしい。
    赤い照明に照らし出された安置室で、男が見せる恍惚の表情が
    まぶたに焼き付いている。


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    2014/12/06 04:01

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