満足度★★★
並行宇宙
一風変わった構成を用いた作品で、偶然性や選択について考えさせられました。
養蜂家の男と物理学者の女のラブストーリーが台詞や立場を変化させながら同じ場面が繰り返されて、様々な選択肢を提示しながら物語が進み、それとはまた別の時系列のシーンが挿入されるという入り組んだ構成ですが、わざと分かり難くしている訳ではなく、すんなり理解できるように演出されていました。
後半は重い展開になって行くものの、単純にお涙頂戴な話にはせず、他の選択肢を仄めかして、運命について考えさせていたのが良かったです。
多元宇宙論や量子力学の話と作品の構成を絡めていたのが洒落ていました。
同じようなシーンを毎回同じように、しかし初めてのように演じることが要求される作品ですが、浦井健治さんも鈴木杏さんもフレッシュな雰囲気があって魅力的でした。
エッシャーの絵画を連想させる階段のループの内側に大きな木が象徴的に立ち、外側には屋内・屋外の様々な場所が散りばめられた舞台美術は、脚本の内容に適したデザインだったとは思いますが、中途半端なリアルさが安っぽく感じられ、もっと本物らしくするか、あるいは抽象的にした方が良いと思いました。