舞台「靖国への帰還」 公演情報 ネリム「舞台「靖国への帰還」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    我、どこからきてどこへゆくか
    矜りは自ら立てるべし!

    ネタバレBOX


     1945年5月末、未明の空へ飛び立った夜間戦闘機、月光に搭乗した武者らが海軍厚木基地を飛び立ち、B29の大編隊を迎撃したが、敵機は500機以上、友軍は漸く40機という劣勢であったが、武者らはB29一機を撃墜後被弾し、雷雲に突入して的の目を欺き、帰投しようとするが、雷雲を抜けた時、彼らが見た物は、見覚えのない物だった。
     武者が気付いたのは、どうやら病院である。戦友の姿は無かった。腹部の傷が酷く助からなかったのである。ところで、何だか様子がおかしい。米国の軍人と日本人が訪ねて来たのである。何と、彼は、21世紀の厚木基地へタイムスリップしてきたのであった。不時着したのが、月光だった為、政府は、この事実を隠蔽、助かった武者を観察したり、未だ信じられないタイムスリップの実例なら実証研究の対象にしようとしていた。偶々、彼の面倒を見るとう名目で忍び込ませていたスタッフから、靖国問題について戦時中の軍人が何を考えていたかの実例として政治的に利用できそうだとの話を聞いた総理、内閣調査室らが画策、首相VS武者のTV対談を組み、靖国公式参拝を既成事実化しようとの計画が持ち上がるが、諸外国からの抗議・外交問題化を懸念する声に負けて頓挫した。然し、武者自身は、自分が生かされているのは、何らかの意志によるものと靖国への忠誠とプロパガンダを素直に信じ込んだ人々のイデオロギーを喧伝する広告塔になろうと決意。反対派ジャーナリストとのTV討論に参加するが、スタジオ入りしていたオブザーバーの女性から本質的な批判を浴びせられ、己が見解の根拠を崩されてしまう。
     一方、心に秘めた純愛の対象であった女性は、未だ存命であり、彼女の兄の孫は、大伯母に瓜二つ。その彼女は、21世紀現在、見た目は自分と殆ど変らない武者に大伯母の愛が乗り移ったような恋愛感情を抱いていた。彼女は、武者と結婚を望んでいる。
     一方、大伯母、ゆみこは、武者 滋以外、総てが、空襲で焼け死んだ彼の家族の墓をずっと守り続けてきてくれていた。墓場で彼らは、偶然再会する。時は、流れ、二人の青春は返って来ない。
     武者を中心とする純愛の品の良さと純度の高さが、今作の一つの柱、そして靖国を巡る様々な立場、意見、主張がもう一つの柱だ。
     純愛に関しては、女性の歩き方、言葉遣い、しとやかさ、羞恥心の在り様などをキチンとした滑舌で伝え、演じたヒロインを褒めるべきだろう。
     武者役も、朴訥なキャラクターを過不足なく演じたと言って良かろう。自分は、武者の戦友を演じた役者の演技も気に入った。
     劇団の姿勢として、真摯に取り組んでいることが、良い印象を齎している。単に、靖国問題を掘り下げたのみならず、その本質に近い所迄、表現して見せたからである。
    私見だが、靖国問題の本質とは、本来、個々人と崇拝の対象である神仏の不可侵の関係を宗教と定義するならば、宗教をスポイルし政治化したことである。実際、これこそ、靖国神社が歴史的に行ってきたことであるから、これは、宗教の脱宗教化という手術を強いた上で、宗教とは無縁な何かに対して宗教という名を冠し、大衆操作の具と化した政治であるという以外に的確な言葉を自分は見付け得ない、ということである。実際「国家神道」という政治的役割を歴史的に果たして来、現在もその延長にあるのが「靖国神社」というシステムなのである。これは、丁度、ユダヤ教を脱宗教化した上で政治的に利用している、イスラエルの「国家」イデオロギー、シオニズムにそっくりである。そんなものは、紛争しか生まないのではないか? 現に、公式参拝が国際問題化することを見ても。

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    2014/11/17 02:03

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