紫式部ダイアリー 公演情報 パルコ・プロデュース「紫式部ダイアリー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    斉藤由貴 + 長澤まさみ
    清少納言 + 紫式部

    の2人芝居。
    そこそこ面白いが、「う〜ん」というところも多い。
    大爆笑ならば、そんな「う〜ん」なんてものは、吹き飛ばすことができたのに……。

    ネタバレBOX

    三谷幸喜さんの作品は、前作『酒と涙とジキルとハイド』が、まったく面白くなかったので今回も期待できないと思いつつも、昔を思い出し、つい行ってしまった。

    そこそこ面白かった。

    清少納言と紫式部がその名前のまま、現代にいるという設定で、タイムスリップとかではない。
    なので、彼女たちの作品『源氏物語』や『枕草子』はそのままだし、藤原とか、関係者の名前もそのままだ。
    ただし、彼女たちがいる場所がホテルのバーであり、「あけぼの文学賞」選考会前日という設定で、スマホもあるし、紫式部はノートパソコンで原稿を書いていたりする。しかも、夏目漱石や三島由紀夫は彼女たちの前の作家という設定でもある。

    なんか面白そうなスタートだった。

    タイトルの『紫式部ダイアリー』は、すなわち「紫式部日記」であるから、その中で清少納言のことを触れているので、そこがこの作品のポイントになるだろうと推測した。

    想像としては、「なぜ、紫式部は清少納言のことを、あのように辛辣に書いたのか?」というところにストーリーは展開していくのではないかと思ったのだ。

    しかし、そうではなかった。
    ラストに紫式部が清少納言のことを書いた日記を盗み見るのだが、その前に「なんと書いてあるか」なんて、清少納言に少し台詞を言わせ、見て、笑って、幕なのだ。
    この展開では、たいして面白くない。

    清少納言と紫式部は、彼女たちが仕えている主家同士が政敵である。
    よって、その仲は良くないはずだ。これが観客の中にある前提だ。
    (劇中ではそのことにはまったく触れていない! 
     けど大切なことではないの? 
     単なるライバルだ、だけでは物語は膨らまないぞ)
    しかし、実は仲が良かった、なんていう設定で、その仲の良い2人が、会話の中で変化していって、紫式部は清少納言のことを結局はこう書いた(仲が悪くなったわけではなく)、というのであれば、ストーリー的な面白さも楽しめたと思うのだ。

    この作品では2人の関係は、「女流作家」としての立場からの、若くてきれいで実力もある者への妬みと、作家として大きくて目障りな者への敵対心を心の中に秘めながらの、言葉のやり取りが主であり、それはそれなりに楽しめたのだ。

    だからこそ、単純なそれだけの話にしてしまうのは、題材が題材なのでもったいないと思ってしまった。
    それで「大爆笑」できたのならば、話はまた別であったのだが、そうとはならなかった。

    清少納言を演じた斉藤由貴さんは、やっぱりうまい。
    大ベテラン作家であるが、おばさん的なところへ差し掛かっていて、若い者への嫉妬の見せ方がいいのだ。
    対する紫式部を演じた長澤まさみさんは、スタイルも立つ姿もいい。
    しかし、突拍子もない大声(奇声と言ってもいいほど)を上げて、テンションが高すぎるところが耳障りだ。
    たぶん、彼女が斉藤由貴さんとマッチするような、細かい演技があまりできないから、こういう奇策に出たのではないだろうか。

    突拍子もない大声・奇声を発すれば面白いと思って演出しているのであれば(たぶんそう思ったからそう演出したのだろう)、まったくの勘違いで、1発ギャグと変わりがない。つまり、喜劇ではない。

    うまい役者が、奇声と感じられないぐらいの声を張り上げて、なおかつテンションの高さを感じられるような演技、つまり、斉藤由貴さんとバランスが取れるぐらいの演技を見せてくれたならば、この作品で、ホントはもっと笑える個所がきちんと笑えたのではないかと思うのだ。

    というか、うまい役者ではなく、長澤まさみさんを選んだからは、長澤まさみさんに対しても、そういう丁寧な演出と指導が必要だったのではないだろうか。もったいないと思った。
    なので、演出を放棄してしまったように感じてしまった。
    ただ、「これが面白い」と思っているフシもあるので、演出家ご本人は放棄などしていないと思っているだろうが(『酒と涙とジキルとハイド』での藤井隆さんの演技も、役者のキャラクターに任せすぎて、同じようにつまらなかったなぁ)。

    喜劇の台詞の間合いは難しい。
    同じ台詞でもちょっとしたズレで笑えなくなってしまうし、面白い内容の台詞を言っていなくても、タイミングだけでとても面白くなることもある。
    だから、もっと丁寧に演出をしてほしかったと思うのだ。

    ラストの雰囲気は悪くないが、先にも書いたが、そこに持っていくまでの展開が乏しい。
    それが残念。

    セットは、「牙」のようなカウンターが舞台中央にあり、2人の関係を見せていた。そして、それが回転することで、単調な2人芝居をアクセントを付けていた。

    シーンごとのつなぎには、誰もがご存じの「トルコ軍楽隊の曲」が使われていた。向田邦子脚本のテレビドラマ『阿修羅のごとく』で有名なアレの一連の曲である。
    「女のぶつかり合い」からの、選曲であるとしたら、ずいぶん底が浅いと感じてしまう。オマージュとか、女流作家という意味合いでもないでしょうし。

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    2014/11/11 06:09

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