神ノ谷㐧二隧道 公演情報 烏丸ストロークロック「神ノ谷㐧二隧道」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    正直暗い…。でも引き込まれる。
    かつての束の間の栄華を表す「大栄町」の名前が虚しい、関西のとある過疎地を舞台とした途轍もなく暗く、寒々しい物語。
    そこに暮らす人々の陰惨極まる生活が“まるで見てきたかのように”生々しく描かれ、否応なしに劇世界へ引きずり込まれた。
    それだけでなく、土地の民俗までが描かれているのも面白味。

    時代がバラバラな複数の出来事を同時に見せる凝った演出は劇の興趣を増していたが、この凝った演出に混乱させられ、一部よく分からない箇所があったのは痛恨。
    多分、私の注意力が足りなかったのだと思います。

    寒々しいがゆえに笑いを誘う、ある親子のやり取りは、基調が暗い本作の良きアクセント。

    ネタバレBOX

    一番笑わされただけでなく、一番惹きつけられたのも件(くだん)の親子のシーン。

    離婚した妻と暮らす思春期の一人娘をなんとか誘い出し、父親が目指した場所は鬱蒼として不気味な森に覆われた神ノ谷峠。

    自分が愛着を寄せるその地も、現代っ子の娘にはキモい場所でしかなく、娘は「イヤや」「行きたない」を繰り返すばかり。

    そんな娘をなだめすかして父娘(おやこ)水入らずのハイキングを強行し、なんとか娘と触れ合おうとする懸命な父親の姿には胸を打たれた。

    自分は同世代の娘がいてもおかしくない中年の独身者だが、もしも自分に娘がいて、ああも拒絶的な態度を取られたら、あまりのやる瀬なさに泣き崩れそう。

    それだけに、グチりながらも山を登った娘が、思いがけず峠に興味を示すラストには感涙しそうに…。

    が、父が娘をなだめながら峠へと導くシーンは、ハイキングに積極的な父と消極的な娘の温度差が滑稽極まりなく、先述の通り笑いを誘ってやまない。

    このシーン、おそらく脚本段階ではそう可笑しくなかったに違いなく、これを笑えるものにしたのは、頭悪げで何事にも無感動な現代ギャルを好演した娘役女優の技量と、その好演を引き出した作・演出家の手柄。

    笑いは演出次第でいくらでも増幅できるという好例を見せてもらった。

    0

    2014/10/26 23:54

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大