嘆きのベイルート 公演情報 ピープルシアター「嘆きのベイルート」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    舞台として「何を観せたいか?」が整理できていなかったのでは?
    原作ありきのお芝居では、

    原作→脚本/演出の段階で、

    (基本的に)単行本一冊の物語にしても
    舞台演劇2時間程度におさめるにはとても長く、
    脚本そして演出の時点で

    「何を観客に観せたいのか?」

    「どういう気持ちにさせたいのか?」

    などを考えて見せ場とそうでない場面を分け、
    削っていく作業があると思います。

    しかし、本劇ではとにかく原作の場面場面を全て
    盛り込もうとでもしたのか、
    とにかく場面の転換が早過ぎる上に
    観客の理解が追いつかない形で場面転換してしまう為、
    置いてけぼりになる観客が多数だったと思います。

    ※ 僕は本作品の原作を読んでいないので
      これでも削った方なのかも知れませんが・・・

    ネタバレBOX

    【気になった点】
    ・ 当初、まるでサーカスのように高さと奥行きを持たせ、
      いくつものとても高い脚立(きゃたつ)で階段(?)を表現し、
      というセット構成を見て「何か期待させるもの」があったのですが、
      結局
      ・ 最後の船の場面
      ・ 主人公の1人バッサームの未来(旅路)を示すロープ(縄梯子)が落とされる場面
      以外なんの効果的な使われ方もしていなかったかと・・・

      お芝居中演者がかなりあぶなげに脚立を登り降りする場面に
      観ているこちらがハラハラさせられるぐらいなら、
      普通のセットを組んだ方が良かったのでは?
      (本劇内容からすると、このセット構成はまるで
      意味を持たなかったかと思います。)

    ・ 上に書きましたが最後のオチがバッサームの未来を予見させる
      「縄梯子が落とされる」だったのにはガックリきました。
      これは演出効果0だと思います。
      観せ方の工夫が足りません、道具に頼っても効果が低いと思ったら
      演技で観せて欲しいです。

    ・ あらすじを読んでいたので、始まり
      ・ 内戦下のレバノン
      ・ 荒んだ(すさんだ)国の中においても、
        生きる楽しみを失わないバッサームとジョルジュ、2人の青年の生き方
      には、本物語に対してこれからどう物語が展開していくのか?
      と期待させられるものがあったのですが、

      そこからが悪すぎました。

      ※ 上手(かみて)、下手(しもて)、
        どっちがどっちか忘れてしまったので
        右、左、と書きますが

      右上バッサームの部屋でのラナとのやりとりがあったと思ったら
      スタスタと左下へ移動し、そのまま「よく分からない」場面に転換するバッサーム。

      なんの説明もなしで主役が移動し、別の演技を始めるなど
      不親切にもほどがあると思います。
      ※ 本来なら前のお芝居のつながりで、次の場面に移動する(=観ていて分かる)、
        または同時刻の別場面を表現する、などが
        早い場面転換の上手い使い方だと思いますが・・・ 
      ※ もう少しだけ上手に「こういう場面である」という状況を
        演技や言葉で説明できなかったでしょうか?

      同様に場面場面の終わりも突然過ぎて、
      お芝居で言う「余韻」のようなものがまったくなく、
      観劇側の感情がまったくついていけませんでした。

      この場面転換がバンバン繰り返されていく様は、まるで
      「映画版 ハリーポッター 1作目」を思い出させるものでした。
      ※ 「映画版 ハリーポッター 1作目」は、
        とにかく原作に載ってるシーン全部を映像として入れ込んだあげく、
        (原作を知っている人間にすら)
        お話が見えない、と大変な不評を買った作品です。

    ・ 同じく観せ方として、
      空襲音とともにたまに(多分)戦時下のレバノンなどの映像を
      背景として登場させていましたが、
      これも「意図」が掴めませんでした。

      ・ 原作に当たる物語の背景に当たる国の状況を見せ、
        このような状況だからこそ人々の心が皆荒んでいった、
        という形でお芝居につなげたかったのでしょうか?

      ・ 単に原作の「戦時下の国」での「青年達の生き方」という事で
        戦時下である事をアピールしたかったのでしょうか?

      はっきりいって映像が使われるタイミングから何からが
      全然効果的ではなかったと思います。
      (お芝居を観る上で”邪魔だ”とすら思いました。)

      BGMやナレーションも同様でした。
      盛り上がりにかけている場面でなぜか「クライマックス」的な
      BGMがかかっても、観ているこちらは「訳が分からない」と思わせられる事多々。

      終盤、バッサームとジョルジュ2人の場面でジョルジュが
      「おれ(達)は戦場で1000人殺した」と語り、
      最後ロシアンルーレットで自らの命を断つ場面、
      あの場面ぐらいに本当のクライマックスだと分かる部分でないと・・・

      激しく盛り上げにかかるBGMが
      「この場面はこれから盛り上がるのか?」と
      誤解をさせてしまうだけだったかと・・・

    ・ 場面転換が早すぎて、色々な場面を描きすぎて、
      大事な場面を描ききれていなかったのでは?

      例.ラナという少女の存在について、観劇していて
        バッサームの彼女だったけど「国を出よう」とバッサームに言うたびに
        「まだだ(一攫千金してからだ)」と言う中、
        兵士になって金持ちになったジョルジュにいきなり
        しっぽを振っている、これではただのビッチに過ぎず、
        なんの深い背景もありません。
        あらすじに書くだけあって、もう少しラナの心がバッサームからジョルジュに
        動いてしまう部分にも深い何かがあったのでは?

      そういった部分を描かず、どうでもいい場面に時間をついやしたのは
      はっきりいって無駄だったと思います。


    申し訳ないのですが、気持ちを引っ張ってくれる場面や
    この観せ方は「上手い!」と思わせる場面などが見当たらなかった為、
    【良かった所】をあげられませんでした。。。
    ※ ほんの少しだけ入れられた笑いネタについても、
      本劇の空気がまったく掴めなかった為笑うに笑えませんでした。


    物語自体原作通りなのでしょうが、例えば
    「ロシアンルーレットの場面、ジョルジュは実は銃に細工していて自ら命を断った」
    とかだと、最後の最後にどんでん返し的に盛り上がったのでしょうが・・・

    本劇を観ていて思ったのは、
    「多分原作はそれなりに面白かったんだろうなあ
    (ジョルジュが夜襲をスポットライトのように
    「まるで映画俳優のようだったぜ」と語る場面などは少し気持ちを惹かれました)」
    ぐらいでしょうか。


    すいませんが、歯に衣着せず本音でズバリと書かせていただきました。

    PS.観劇途中、他の観客のあくびが結構聞こえてきてしまいましたが
      「お芝居においてけぼりを食ったらそりゃああくびも出るわな」
      と本来ならマナーが悪い、と取る事にすら同意してしまいました。。。
      非常に残念です。

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    2014/10/22 23:08

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