NO MOON,NO SUN 公演情報 Trigger Line「NO MOON,NO SUN」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    プリンセスの孤独
    2年ぶりの新作はダイアナ元皇太子妃の交通事故死をモチーフに、
    フィクションとノンフィクションを織り交ぜたという作品。
    一つの事件を複数の視点と思惑から照らし出す展開は、スピーディーで緊張感に満ちている。
    登場人物がいずれも魅力的で、キャラの立った悪役も素晴らしい。
    が、男3人の友情、“プリンセス”の自我、暗躍する保安機関、ホテルマンたち、と
    エピソードのバランスが良すぎて、形が整った分印象が薄くなった感あり。
    ジョエル役の林田さん、やさぐれても品があって髪の色までうまく役にはまっている。
    “最悪な死に方”をする藍原直樹さんのぶれない視線が素晴らしい。

    ネタバレBOX

    向かい合った客席に挟まれた舞台はほぼ裸舞台に近く、
    小さな木製の台が一つだけ置かれている。
    物語はあの衝撃的な交通事故の場面から始まる。

    離婚して王室を出たプリンセスダナエ(染谷歩)と
    エジプトの大富豪の息子ラシード(西岡野人)の恋は、あまりに注目されすぎていた。
    自分の居場所を求めていたダナエ、父親から自立したいラシード、
    ダナエを妃候補として見出した時から見守ってきたキングストン卿(桝谷裕)は
    理解者であるが、彼女の自由を求める気持ちを許すことができず、
    それはほとんど偏執的だ。
    かつて英国諜報部員として生死を共にした3人の男は今や敵味方に分かれている。
    ジョエル(林田一高)、ヒース(藍原直樹)、トラヴィス(経塚よしひろ)は
    全く違う立場からこの事件に深くかかわることになる。
    そして事件の背景にはダナエ自身の捨て身の計画があり、
    またジョエルにもある計画があった…。

    舞台となるホテルの経営補佐ルイ・バレ役のヨシケンさんが巧い。
    ヤな奴だけど仕事は確かに出来て、正論を吐く。
    自分勝手だが他人の自由もまた認める。
    単純な善悪を超えた人物像が立体的で、誇張気味の演技が成功していると感じた。

    一方ダナエの自由を英国の危機と見てその行動を阻止しようとするキングストン卿と
    彼が率いる民間保安機関ペルソナのメンバーヒースは
    一貫して“イッちゃってる目つき”が素晴らしい。
    こういう目をした人間でなければできないであろう行動に説得力を持たせる目つきだ。
    そしてそれがラストの死に方をよりドラマチックに見せる。

    ちょっとドラマチックにしようとし過ぎた感があったのは
    ダナエとラシードが対角線上に見つめ合う“マイウェイ”のシーン。
    あれは役者さんもきついのではないかと思うほど長かった。
    また、ダナエの衣装が“日本人のリゾートウェア”みたいな
    印象を受けたのは私だけだろうか。
    男性陣のいでたちがそれぞれリアルにはまっていたので余計にそう感じてしまった。

    事故現場の写真を撮ろうとするパパラッチにジョエルが叫ぶシーンは
    “大衆の最後の良心”に訴えるものがあって思わずぐっと来た。
    視力を失ったジョエルが死を思いとどまるラストシーンも救いがあってほっとする。

    群像劇として完璧なバランスだけに、整い過ぎた物足りなさを感じるのは
    贅沢というものだろう。
    でもどれか一つのエピソードを突出させることで、
    凄みが増した舞台も観てみたい気がする。
    たとえば彼女が最期に発したとされる「もう放っておいて」というひとことで
    号泣するような、夫を除く世界中から愛された女性の孤独の物語などを。





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    2014/10/12 00:05

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