この幻想を“聴く”私たちは常に思想的赤ん坊である
岩手の詩人、宮沢賢治。その代表作『銀河鉄道の夜』は初めて購入した文庫本だった。
岩手の田舎町に農林学校教師を勤めた宮沢賢治が どうして「西洋的」街並みを建設していったか。キリスト教徒ではない。浄土真宗信仰を幼少期にもちながら、「カンパネルラ」「ジョバンニ」といった“外来語”を自然に内在化する。
『銀河鉄道の夜』は死語の噺であり、浄土真宗の死生観が反映された幻想画といってもよい。ところが、『銀河鉄道の夜』はそうした「仏の教え」を高見から諭す寓話では絶対にない。キリスト教的「愛」を、当時からすればエキゾチックな街、車窓、宇宙空間において思想的に宥和していったのである。
※続く