幻書奇譚 公演情報 ロデオ★座★ヘヴン「幻書奇譚」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    脚本力!ユーモア!批評性!
    私は演劇の可能性はドラマではないと思っているのだが、
    そんな人間をも圧倒するドラマの力。

    緊張と緩和のバランスも絶妙で、
    とても笑える。

    エンターテイメントとしても面白いにも拘わらず、
    今日の世相を強烈に批評している。

    素晴らしい作品。

    ネタバレBOX

    展開が二転三転というレベルではなく、目まぐるしく反転を繰り返す。
    Aという真実が浮かび上がりかけると、Bにひっくり返され、更にCに、Dに、E、、、という具合。
    剥いても剥いても真実にたどり着けない玉葱のようだ。

    もともと人間は疑心暗鬼から自分勝手な妄想に駆り立てられる性質を持っている。
    それが、ネット社会の到来と、政治不信の社会状況から、おそろしい加速をみせている。
    この作品はそんな社会に渦巻いているあらゆる陰謀論を相対化している。

    特に素晴らしいのは、その陰謀論への批評が、
    左・右どちらの陰謀論をも風刺しえているというところだ。
    左派が過剰に「すべて権力の陰謀だ」と短絡してしまうような在り方をも批評していると同時に、
    右派がすぐに「中国や韓国、北朝鮮の脅威」を煽る在り方をも批評しえている。
    つまり、ここで批評しているのは世相に漂っている空気のようなものだ。
    それは左右の違いをも超えて飲み込み蔓延しているもの。

    こういう立場を越えてすべてを相対化する姿勢は、
    自分は責任を負わずに他者(多くの場合、左翼的な正義)を批判して、
    自分だけは「正義を振りかざさない」と言いながら、
    結局その姿勢そのものが神の視点になるという場合も多い。
    ポストモダン思想を安易に受容し、自己正当化をはかる者に多い。
    だが、この作品からそういうズルさは感じない。

    ここで相対化され続けるそれぞれの意見に、それぞれに説得力があるからだ。それは、ひっくり返される場面さえも、最終的に嘲笑うための材料になっている訳ではなく、それぞれに自立した真実味があるからだろう。

    これは柳井祥緒氏の内面の分裂・葛藤から来ているのか、
    それとも、極めて秀逸なドラマツルギーのテクニックから来ているのか、
    わからない。どちらであれ、本当に素晴らしい。

    ラストは、中井英夫の「虚無への供物」のように、玉葱の芯はないという終わり方でぼやかすのかと思ったら、芯自体は明らかにされた。
    結果、虚無への供物だった訳だが。

    「真面目が世界を滅ぼす」
    こんな感想をクソまじめに書いている私には突き刺さる言葉だ。


    ミドル英二さんが以前、「素晴らしい戯曲は役者を上手く見せる」という主旨のことを書いていたが、今回、本当にそう思った。
    というのは、最初役者が出てきた時、
    会場が狭いこともあって「演技が過剰だな」と思ったのだが、
    観ている内に、まったく気にならなくなっていったからだ。
    「そういう世界の人」と認識するようになっていった。
    特に音野暁さんの三枚目役がとても面白かった。

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    2014/09/24 20:49

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