殿(しんがり)はいつも殿(との) 公演情報 ポップンマッシュルームチキン野郎「殿(しんがり)はいつも殿(との)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    これ、二連覇行ったね
    と脚本を書いているときから、ほくそ笑んでいる吹原さんの姿が、舞台の中からうっすらと見えたようだ。
    心なしか、舞台の上でも彼の口元がほころんでいたように見えた(ウソです)。

    きちんとストーリーが組み上がり、遊びはあるが無駄はない。
    きちん面白いし、きちんと笑わせてくれる作品だ。
    いつものポップンマッシュルームチキン野郎(長いので以下、ポップンマッシュルムチキン野郎、とする)だ。
    ただし、ファンとしては……。

    ネタバレBOX

    いつものとおりに、確実に面白い。
    物語の軸に少し恥ずかしい感じのイイ話があるのもいつものとおり。
    しかし、「いつも」とは少しだけ違う。

    前回優勝者であり、今回も勝つ気満々だから「いつも」とはほんの少しだけ変えたのだろう。
    それは優勝すると「テレビ放送」があるからだ。
    「いつもの」彼らはもっとアブナイネタや下ネタが多い。
    しかし、勝ってテレビ放送となれば、そのままでは放送できない。

    前回優勝のときには、脚本に手を入れ、放送用バージョンとしたものがオンエアされた。
    (それはそれで面白かったのだが、舞台バージョンとの違いとか)
    その作業と練習は意外と大変だったのではないだろうか。
    だから、少し勘ぐってしまえば、今回は「そのまま」でいける作品にした。

    とは言え、それでも彼らの面白さには変わりがない。

    幕が上がる前から彼らの勝負は始まっていて、サイショモンドダスト★さんが、ニワトリのメイクを客席で行う。そのやり取り、台詞の練習から、観客は彼らに飲み込まれている。
    ここも上演時間の45分に含めないとダメだろ! と目くじらを立てたいところだが、これも「いつもの」彼らなので、問題はない。2番手なので、観客は確実に観てくれる。

    そして幕が開き、「ああ、この夫婦の温かい話になるんだな」と読めてしまうのだが、それでも、関ヶ原から未来の宇宙空間まで飛び、その展開は読めないし、それが面白い。

    展開の途中に現代のシーンを挟むことで、場面展開もうまくでき、彼らの舞台が初めての観客にも、「この老夫婦(の妻)がいることを忘れないでね」ときちんとアピールする。
    だから、いきなりもとに戻るのではなく、ソフトランディングでラストに向かう。
    そういうテクニックがうまいのだ。

    時代劇のチャンバラも面白いし、「いつもの」とおりに被り物たちも面白い。
    ヤカンのシーンなど、いい塩梅でストーリーの脇に行くのもさすがだ。
    いろいろ挟まる小ネタも無駄がないし、本編を邪魔しない。
    余裕があるし、物語がしっかりしているからそれができるのだ。

    父親の残した自分の過去の話が、実は、という着地点は、彼らだからできる着地点なのだ。
    すなわち、いつも何でもアリな彼らだから、観客はこのハチャメチャな過去の話も、この作品の中では「ホンモノ」だと思い続けることができるからだ。
    観客の持つ劇団へのイメージを逆手にとった見事なストーリー展開だ。

    だから、父親の本当の過去がわかっても、観客はどこか、そのわかった過去とハチャメチャな話が合体するのではないか、と思っている。
    しかし、そうではなく、しっとりと終わるのだが、唐突感もなければ、最初からわかってたよ感もないのだ。
    (途中まで「火の鳥」かよっ って思っていたのはナイショ・笑)

    父親役(最初は後ろ姿だけ)の加藤慎吾さんが宇宙編では話の中心人物を演じ、CR岡本物語さんが戦国時代の中心人物を演じて、それがごっちゃになっていくところがうまいと思うし、ラストに彼らが入れ替わるというシーンも効いてくる。
    物語がきちんと収まるべきところに収まった。

    役者ももちろんいい。
    これだけ大勢がわずか45分の舞台に出ているのだが、無駄はないし、ダレることもない。
    中でも、やはり殿様を演じたCR岡本物語さんがいい。この戦国時代(から江戸時代)のエピソードの中心をきちんと持っていく。登場人物も多いし、立ち回りもあるのにもかかわらず、存在感を「面白く」示しているのだ。

    唯一残念なのが、先に書いたとおりに、「毒」が少々薄まってしまったかな、というところだ。
    「毒」があっても、「イイ話」に着地して、そのバランスが見事なのが、この劇団のいいところなのだから。

    で、ちなみに、これって、あれでしょ、「殿」を「しんがり」と読むことを知ったからのタイトルでしょ? 違います?
    そして、タイトル『殿(しんがり)はいつも殿(との)』と読ませているが、『殿(との)はいつも殿(しんがり)』と読んでも大まかには意味は変わらないですよね。

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    2014/09/24 08:17

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