300年の絵画と鉄仮面の姫君 公演情報 KENプロデュース「300年の絵画と鉄仮面の姫君」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    KENプロクオリティ(!)とWキャスト
    初演の後に催された「嘘つきの姫君~」「RED」へも継承される
    北沢タウンホール向け作品のコンセプトに包まれた作品でした。

    ネタバレBOX

    それはおおよそ、主人公側集団と敵対側集団の抗争と冒険活劇。
    主人公側の淡い恋物語やハートフルな展開。
    殺陣によるクライマックス。

    これらを物語の設定に絡めアレンジし、わかり易く水準作に仕上げる。
    「KENプロクオリティ」と勝手に呼称したい良質な作品で、客席にも
    いらしたであろう演劇に親しまれていない方でも存分に楽しめる安定感が
    備わったつくり。
    言い方を変えればいつも通り面白く琴線に触れるけれど、目新しさや
    刺激は感じなかった物語だけにミュージカル仕立てはとても心地良い
    アクセントとなり、中でも『アラピアンナイト』と『イノシシ』のメロディーは
    耳に残り楽しめました。

    本作は絵画・仮面両チームを観劇させて頂きました。なので、物語よりか
    個人的に目立った登場人物御三方に絞っての印象を述べさせて貰いますと…

    アラビアンな魔人といえばハンナ・バーペラ・プロのアニメ「大魔王シャザーン」を
    連想出来る者にはスキンヘッドで後ろ髪に顎髭に上半身裸という壺のジン
    イフリート役石谷力さんの風貌は役作り以前の説得力で圧倒されました。
    シングルキャストにして作品のイメージキャラクターに位置づけてもと
    思えるくらい存在感ありすぎでした。
    一方の阿部博明さんはビジュアルが異なりすぎるだけに「しょうがねえな!
    手助けしてやるか!」的なアニキ風を吹かせたイフリートを感じさせる演技。
    それが、単に「世話の焼ける妹達」と化した可愛い壺使い魔ララやリリと
    良い雰囲気で組み合わさる妙味でした。

    絵画のジン、イブリース役を男女で演じ分けるというのも実験意欲のある配役でした。
    多賀啓史さんの見開いた瞳、無表情に近い不気味さ、台詞回しは最強のジンらしく
    あの風貌の石谷イフリートを嘗て打ち負かしたという設定のリアリティを持たせるに
    うってつけの佇まいでした。
    友部由菜さんのイブリースに不可がある訳ではないものの、魔女という役柄とは
    ちょっと違う上、配下4人も全員女性で固めらた女所帯で、悪役以上の個性を
    色付けするにはハンディキャップが拭えない気の毒さも見受けました。

    ライラ姫、白城華奈さんはボーカル部分での評価が色々(?)かもしれませんが
    主役シャイク同様に個性を色分けされたWキャストで、世間知らずの我儘お嬢様
    というヒロイン像の確立に適役だったと思います。
    胸の谷間が強調された衣装などもビジュアル担当といえる白城さんならではの
    魅せどころでありましたし。
    一方、芳月実桜さんの伸びやかで美しいボーカルと「ザ・お姫様」とも称せるような
    わかり易い品の良さは、橋本深猫さんのこれぞコメディリリーフという芝居やボーカルと
    併せ、所属役者が「KENプロクオリティ」の安定感を下支えしていることを
    再認識させてくれるものでした。

    KENプロデュース公演は通常Wキャストがスタンダードですが、公演期間・回数の
    少なさや高めのチケット料金とを鑑みるに「出来れば両方観て欲しい」というより
    「知り合いか、好きなキャストが出ている方、どちらかを観て欲しい」との姿勢へ
    軸足が置かれているようにも勘繰れます。
    一公演回の動員率を高めてペイするリスク回避や、1人でも多くに出演機会を提供
    しうる利点を認めることは容易ですが、良質な創作が成されているだけに
    「この公演はこの姿形(キャスト)だ!これを絶対見て欲しい!!」と太鼓判の作品も
    出来るだけ提供して頂きたいと望まずにいられません。
    それに拘らないところが劇団では無い、プロデュース公演たる所以でしょうが、リスクを
    背負わない無責任な立場からの希望ながら、今後へ気に留めていただけたらという
    想いです。

    今回は初演DVDの物販を見かけなかったので、今公演のに予約を入れてきましたが
    こちらは両チームの同梱版。DVDでは「両方観て欲しい!」の姿勢?!

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    2014/09/18 21:00

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