夏の砂の上 公演情報 作戦会議「夏の砂の上」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    ボディブロー
     見終わった瞬間、この作品は、ボディブローのように後になって効いてくるだろうな、と感じた。ただ、これでもかというほど、「なにも無い」日常をくどく描く必要は、ないのではなかろうか? その点だけ気に掛かった。

    ネタバレBOX

     蝉の鳴き声が苦痛になるほど体力が奪われる一瞬、ラストシーンをどう解釈するかで評価はガラリと変わる。自分は、2回目の長崎への原爆投下乃至は核の重大事故と解釈した。そう判断したのは、通常なら、戯曲作家が当然、それを題材として、戯曲を仕上げるようなテーマがたくさん挿入されているにも拘わらず、とば口だけ見せて、一切、発展しない作りになっていること。登場人物の喉の渇きが、何度となく描かれていること。水が来ないことが、諦めと共に描かれていること。立山と優子が鏡の破片で光を反射して悪戯をする時、異様な嫌がり方をすること。更に、雨水を「おいしい」と言って複数の人間が夢中になって飲むこと。これは決定的である。また、思春期の優子の気まぐれであるかのような訳の分からない、この街に対する嫌悪も、BaudelaireのAny where out of the worldに匹敵する強さで迫ってくることも。
     我々は広島・長崎で原爆が爆発した後、黒い雨が、凄まじい勢いで降った、という事実を知っている。まだ、息のあった被災者達は、それを命の水のように飲んだに違いない。無論、このように酷く汚染された水を命の水のように飲まねばならなかった被爆者たちの体は、焼け爛れ、皮膚のずるむけになった赤黒い体表からは、血とリンパ液が滴り落ちていた。それ故に、体中の細胞が呻いていたのだ。水ヲ下サイ、と。
     この事実に気付いた時、今作を観た観客は、背筋に慄然たるものが流れるのを感じるであろう。原 民喜の有名な詩を以下に引用しておこう。http://yoshiko2.web.fc2.com/hara.html
    水ヲ下サイ
    水ヲ下サイ
    アア 水ヲ下サイ
    ノマシテ下サイ
    死ンダハウガ マシデ
    死ンダハウガ
    アア
    タスケテ タスケテ
    水ヲ
    水ヲ
    ドウカ
    ドナタカ
     オーオーオーオー
     オーオーオーオー 天ガ裂ケ
    街ガ無クナリ
    川ガ
    ナガレテヰル
     オーオーオーオー
     オーオーオーオー

    夜ガクル
    夜ガクル
    ヒカラビタ眼ニ
    タダレタ唇ニ
    ヒリヒリ灼ケテ
    フラフラノ
    コノ メチヤクチヤノ
    顔ノ
    ニンゲンノウメキ
    ニンゲンノ


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    2014/09/04 02:17

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