シットアウト 公演情報 tubbing「シットアウト」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    軽いのに深い
    極小空間で交わされる台詞がまるで“正確な矢”のように素晴らしい。
    目指す相手にきちんと届く、それも無駄なく最短の距離で。
    崖っぷちでそれぞれ切羽詰っている3人の会話はテンポ良く弾み、
    三者三様の「ないものねだり」が丁寧に浮かび上がる。
    脚本・演出、そしてキャスティングの妙を堪能した。
    鮮やかな初日の充実ぶり、終演後の拍手がそれを端的に表している。

    ネタバレBOX

    ひとりの画家が死んで1年、一番弟子だった開人(大沼優記)のアトリエを
    画家のマネジメントをしていた彩音(小玉久仁子)が訪れる。
    画家の一人息子走(末原拓馬)もやって来て久々の再会をする。
    だが実は3人とも、それぞれに追いつめられた状況にいた。
    詐欺にあって大切な絵を失いそうな彩音は一発逆転を狙っている。
    今や漫画家として順調な走はやはり絵を諦め切れずにいる。
    そして開人は画家として致命的な症状に苦しんでいた。
    画家が残した最後の絵を巡って、3人の思惑と過去が交差する…。


    かつてアトリエでいつも一緒に過ごした3人は
    それぞれ自分の才能と格闘しながら生きている。
    誰かの才能を信じ、その才能を愛し、そしてどこかで妬んだりする。
    人の才能より自分の才能を信じる方が難しいものだ。
    だから誰かもう一人、一緒に信じてくれる人が欲しくなる。
    その心細さやジレンマと闘い続ける芸術家の孤独が、普遍性を以て迫る。

    亡くなった画家の、絵も人間性も全てを愛した彩音の独白に惹き込まれた。
    小玉さんの台詞は抜群のタイミングで繰り出すテンポと勢いが魅力だが
    中盤、亡き人を想って静かにくり返す「会いたい…」という台詞がひときわ光る。
    毒を吐きつつ、大事なところでは素直になる彩音のキャラがはまり役。

    大沼優記さん、“画家として決定的な欠落”を抱える男を淡々と演じて上手い。
    元カノ彩音とのビミョーな会話も、小玉さんに上手く絡んでとても楽しい。
    小玉久仁子が元カノって設定だけでもすごいのに、台詞で負けてないからまたすごい。

    血筋も才能もあって、その気がなくても何だか上手くいっちゃうお坊ちゃま走。
    彼の中に潜む“否定された故の執着”が首をもたげる様がリアル。
    末原拓馬さんの“育ち良さ”と相まって生き生きとしたキャラがとても魅力的。

    これはアテ書きだろうか、脚本の米内山陽子さんが生み出したキャラが
    役者に素晴らしくハマっている。
    小さな空間で3人それぞれの思いにスポットライトを当てる広瀬挌さんの演出も巧い。
    軽妙な台詞の応酬で笑わせながら、人の心の深いところを突いて来る。
    座組みの相性の良さも気持ちよく、忘れられない作品になった。

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    2014/08/30 01:04

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