満足度★★★★★
「命」よりも大切な「憧れ」と出会う時
「僕たち、どこまでも、どこまでも、一緒に行こうねぇ・・・」
『銀河鉄道の夜』の旅の終わりに、
ジョバンニが、カムパネルラに告げたこの言葉・・・
受け取る者を失った、
ただ銀河空間をさまよい続けるしかない
この言葉が残した余韻・・・
その深淵なる哀しみを
実際の事件の中に描き出した秀逸な舞台。
戦後の混乱期、国鉄総裁が巻き込まれた未解決事件、
『下山事件』を辿りながら、
あの時代と、この現代にも繋がる
日本人の孤独と、言いしれぬ寂寥をあぶり出してくれました。
一人の人間が「自死」を選ぶ。
それは、どういうことなのか。
幼少期から綴られる、
その人だけの物語の中の、
どの部分が「闇」を連れて来てしまったのか!
かつて親友が自死を選び、
近くの踏切から銀河鉄道に乗って逝ってしまった経験のある私としては、
人が「命」よりも憧れる
「何か」に心奪われる瞬間の輝きと漆黒について
想いを馳せてしまいました。
・・・自分らしく生きることを許されぬ現世ならば、
・・・「憧れ」を選ぶかも知れない。自分の命と引き替えに。
まさに身を切るような痛みと哀しみを
一つの芸術として完成してくださった
『ひなたのなかのこども』のカンパニーの皆様に、
心から感謝いたします。
本当にお疲れ様でした☆
皆様が観客の心に残した余韻は、ずっと消えることは無いでしょう。
誰もが今、
自分の人生の中で闘っているその「闇」は、
しばらくの間、未解決のままだと思うから。